日本の魅力を、日本のチカラに。JNTO 日本政府観光局

PROJECT 日本の観光を変えるプロジェクト 4

新しい富裕層マーケットの開拓に向けて

  1. ドバイ事務所の新設とその成果
  2. 見えてきた課題
  3. 課題解決への取組
  4. ミッション達成に向けて

1ドバイ事務所の新設とその成果

JNTOは、中東地域市場という新たな富裕層マーケット取り込みのための活動拠点として、2021年11月にアラブ首長国連邦(UAE)にドバイ事務所を設置した。中東地域は、これまで日本としてはほぼ手つかずの新規開拓市場であったが、ドバイ事務所の設置から約2年後の2023年においては、中東地域市場からの訪日外客数はコロナ禍前の2019年比で115.2%にのぼり、JNTOが重点市場と定める23市場の中でも高い伸び率を達成している。
新型コロナウイルス感染症に関する規制等の緩和・撤廃が早期に進められていたUAEを中心とする中東地域市場では、海外旅行需要の回復も急速に進んでいる。ドバイ事務所ではこの契機を逸することなく、2023年1~3月にかけて現地の有力メディアを活用したオンライン・オフラインでの情報発信や日本に直行便を就航している航空会社・現地旅行会社との訪日再開に向けた共同広告等、多角的なプロモーションを展開し、旅行先としての日本の認知度や訪日意欲の向上を図った。マーケット全般における海外旅行の機運が高まっていることに加え、2022年11月にはUAE国籍保有者への査証免除措置が実施されたこと、中東地域からの訪日旅行者が最も多い桜の時期が迫っていることなど、訪日旅行への追い風となる要因が複数重なっていたことも、この時期に機動的なプロモーションの実施が必要だと判断した理由である。以降、中東地域からの訪日外客数は、コロナ禍前の2019年比で見ても好調な伸びを続けている。

現地旅行会社との共同プロモーションによる日本特設ウェブページ

2見えてきた課題

ドバイ事務所では、現地の旅行関連イベントに出展した際に聞かれる消費者の声や事務所で運営しているSNSに寄せられるコメント等から、最初の課題であった旅行先としての日本の認知度の向上が順調に進んでいる手ごたえを感じているが、それと同時に、この市場が抱える各種課題も具体的に見えてきた。
BtoBにおける課題は、現地旅行会社と日本側DMC(Destination Management Company)とのコネクション不足である。旅行先としての日本の認知度が高まっている最中であるとはいえ、現状ではまだ訪日旅行を独自に取り扱える現地旅行会社は少ない。従って、現地旅行会社は、訪日旅行を手配するために日本側のDMC等に行程の作成から手配までを通しで依頼することが多い。しかし、日本側DMC等とコネクションを持たない現地旅行会社は、せっかく訪日旅行の手配依頼を受けても日本側にその相談先がなく、結果として思うように手配を進めていくことができないという状況が少なくないということが分かってきた。
また、BtoCにおいては、訪日旅行情報のより効果的な発信方法を模索している。JNTOが実施した調査によれば、中東地域市場においては、海外旅行先の選定にあたって知人や友人・有名人のSNSや口コミを参考にする傾向が非常に強い。ドバイ事務所では、SNSの公式アラビア語アカウントから恒常的に訪日旅行情報を発信しておりフォロワー数も順調に伸びていたものの、中東地域の一般消費者に旅行先としての日本をより身近に、現実的に感じてもらうためには、広く面積を捉える情報発信手法に加えて、より深く刺さり得る情報発信を行うことの必要を強く感じていた。

3課題解決への取組

前述の課題を解決するため、ドバイ事務所ではいくつかの具体的なアクションを開始している。まずBtoB向けには、現地旅行会社向けの訪日旅行セミナーに日本のDMC等の参加を促しネットワーキング機会を提供したり、現地で開催される大規模な旅行見本市に日本からの共同出展を募って参加し、現地旅行会社と日本側DMCとの商談機会提供を行うなど、相互のコネクション形成機会を積極的に設けた。またBtoC向けには、JNTOとして初めて中東地域市場を拠点に活動する富裕層インフルエンサーを日本に招請し、彼らの目線を通じた旅行先としての日本の魅力の発信を行った。前年度に実施した活動から浮き彫りになった課題に対して、翌年度において具体的な改善・対策を図りながら取り組みの改善を行っていったことも、現在の訪日客数の大きな伸びにつながったと言えるだろう。

  • インフルエンサー招請の様子を撮影して制作した
    プロモーション動画

  • UAE・ドバイで開催された旅行見本市の様子
    (共同出展者の皆様と)

4ミッション達成に向けて

中東地域からの訪日旅行者の着実な伸びに強い手ごたえを感じている一方で、中東地域市場という「新たな富裕層マーケットの開拓」をミッションとするドバイ事務所において、今後クリアしていくべき課題もまだまだ多く残っている。
例えば、中東地域のマーケットインサイトを今以上に深く分析・把握することが必要である。中東地域の富裕層の多くが、年に何度も海外旅行をしており海外旅行先で多くの消費をしていることが分かっている。彼らは、自身が納得したもの、自分にとって価値があると判断したものに対しては惜しみなく時間や費用をかける。言い換えれば、彼らが時間と費用をかけてでも訪れたい、体験してみたいと思う日本の魅力、日本ならではの観光コンテンツは何か、これを的確に捕捉してそれらを踏まえたプロモーションを行っていく必要がある。また、現地でのプロモーション活動に加え、今後は日本のDMCやコンテンツホルダーへの働きかけも更に重要となってくる。中東地域の富裕層ニーズを捉えた上で、それに対応できる観光地やコンテンツを増やしていくこと、そういった旅行アレンジやコンテンツ提供をする日本側のプレーヤーを増やしていくことも必要になってくる。

日々の各種活動・取り組みの中から課題を明確に把握し、その課題に対する解決・改善の新たな取組を着実に実施していくというプロセスは非常に地道で長い道のりであるが、ドバイ事務所では、職員一丸となってミッション達成のために一歩一歩確実に前進を続けてく。

PROFILE

ドバイ事務所

ドバイ事務所

中東地域市場のプロモーション強化を目指して2021年11月1日に開設しました。担当地域は中東、北アフリカ地域のアラブ・イスラム諸国です。現在は日本からの派遣職員3名と現地職員2名の5名体制、強固なチームワークを頼りに、中東という未知の市場で日々奮闘しています。

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