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今注目のOTAに聞く② ~KKday編~ 台湾から見た訪日旅行の魅力

今注目のOTAに聞く② ~KKday編~ 台湾から見た訪日旅行の魅力

今注目のOTAに聞く② ~KKday編~ 台湾から見た訪日旅行の魅力

インターネット上で24時間、旅行者が自分の都合の良い時にいつでもアクセスして商品を検討・注文できるOnline Travel Agent(OTA)。コロナ禍を経て、今後もますます活用されることが予想されます。今回は、海外に拠点を置きマーケティングにも精通したOTAのひとつである、台湾に本社を置く「KKday」の深井洋平氏に、自社が基盤とする台湾におけるOTAの現状と、OTA需要にどのように対応すべきかについてお話を伺いました。

台湾でのOTAの普及状況

―台湾でOTAはどの程度、浸透していますか? またその中でKKdayはどのような存在なのでしょうか。

台湾でのOTAの普及状況は、日本とほぼ同じです。20〜30代を中心に、ホテルや航空券・体験領域に関してOTAで予約をする人がかなり増えています。特に若い人たちの間では、海外旅行はFITのスタイルを好み、その予約はOTAでという流れが進んでいます。KKdayは、アジア最大級のオプショナルツアーを提供するOTAで、台湾に本社を置き、FIT(個人旅行客)のお客様に、旅先での特別なアクティビティや体験を提供しています。

KKdayの創業者は約20年前からオンライン旅行業に携わっており、アジア地域でOTAの領域に取り組んだ先駆的存在です。そのため台湾の街角やメディアなどさまざまなところでブランド名を目にするような、国民的ブランドに育っています。

KKday利用者のボリューム層は10〜30代ですが、40代以上にまったく受け入れられていないかというと、そんなことはありません。45歳以上の会員も15%程度いるので、徐々に中高年の年齢層にも浸透してきているところです。

―OTAを利用する人が増えているのには、どのような背景があると考えていますか。

24時間、いつでも自分の都合の良いタイミングでアクセスして予約ができるというところが支持されているのだと思います。仕事を終えた夜の時間帯に、家族や友人と旅行の話をして、じゃあ、これにしよう! と盛り上がったタイミングですぐに予約ができるというのはOTAだからこその強みです。実際にお客様がKKdayを利用する時間は夜間が非常に多いです。

もうひとつ、OTAの特徴としてあげられるのは、現地での予約を中心とした直前予約がしやすいことです。台湾人が日本に行って、その旅行先からKKdayを使って日本でのアクティビティを予約する、といった動き方ですね。これがかなり多くの割合を占めていました。

OTAが普及する前は、飛行機に乗ってから帰ってくるまで、そして現地ではどこで何をするかまで細かく決められた旅行をする人が多かったと思います。しかし近年では、航空券だけ手配して日本に行き、「明日は晴れるからアウトドアのアクティビティをしよう」とか「今日中にここまで移動するから、このエリアで今夜のホテルをとろう」とか、その時の状況で臨機応変に旅をする人が増えています。これに対応できるのがOTAの強みなのだと思います。

コロナ禍を経て、少しずつ日常が戻ってきている欧米などの動向をみても、予約のリードタイムが短くなっていることがわかります。今までは3ヶ月先の旅行の予約もしづらかったのが、最近では「確実に旅行に行く・行ける」という方々が増えていることがわかるくらい、1週間以内の旅行の予約が増加しており、利便性が高いOTAだからこそ、これに無理なく対応できるのだと思っています。

 

台湾から見た訪日旅行の魅力

「KKday」サイトトップ

 

 

台湾から見た訪日旅行の魅力

―台湾の方は、日本の観光地のどのような点に魅力を感じるのでしょうか。

まずは地理的にとても近い外国だということです。新幹線(台湾高速鉄道)を使って台北から台南の高雄に行くより、飛行機で台北から大阪・名古屋に行く方が早いくらい、台湾と日本は距離的に近いのです。沖縄は言うに及ばず、飛行機に乗ってシートベルト着用のサインが消えたと思ったら、すぐに到着準備のアナウンスが入るくらいです。金額的にもリーズナブルなので、日本への旅行はもはや国内旅行感覚です。

また、歴史的経緯もあって親日的な感情を抱いている人が多く、日本の長い歴史の中で受け継がれてきた伝統的なものに感動する人々がとても多くいます。コロナ禍前は、約2,300万人の人口の国なのに、毎年400万人もの人が日本を訪れていたわけですから、どれだけ台湾の人が日本を好きかわかります。3連休があったら「日本に行こう」と思うような人がとても多い国ですね。

KKdayの事業的に見ても、東アジアにおける観光需要を牽引する存在は日本だと考えています。なぜなら、日本には魅力にあふれた観光地がたくさんあるからです。先進的な建物が並び、ショッピングが楽しめ、しかも大都市であっても比較的安全・安心な観光が楽しめる。北国や日本海側ではスキーをはじめとした雪遊びができ、さらに沖縄のような優れた南国リゾートもある。バラエティに富んだ観光地が一国の中に共存しているというのは他の国にはあまりなく、これは圧倒的な強みです。その上、台湾と地理的に近い東南アジアの国々にはない“四季”もある。訪れる季節を変えれば、違う表情の景色を楽しめる、魅力が詰まった国なのです。

―コロナ禍の前と後で、旅行の需要に明らかに変わった点はありますか。

これは台湾の国内旅行の事例比較になりますが、大きく分けて2つの変化がありました。ひとつは旅行先の「地域」です。コロナ前は都市型観光に人気が集まっていましたが、コロナ後はそれが一変して、郊外型の旅行が人気となりました。またもうひとつの変化が「商品名」です。それまでは「台南半日観光ツアー」のような漠然と観光エリアを示しただけのツアーでもよかったのですが、コロナを経て自然体験を求める人が増え、商品名に「ホエールウォッチング」や「グランピング」など、自然の中で何ができるかを明確に表したツアーの動きがとても良くなっています。

もちろんコロナで密を避けなければならない状況を経験したわけですから、郊外で人が分散されるようなところに行きたくなりますし、室内よりも外の方が安心できるという気持ちは分かります。ですからこの動きは一時的なもので、コロナ禍が落ち着いたら、元の都市型観光の需要が戻るのではと考えていました。しかし今のところ、まだその傾向は続いています。これはコロナ禍を経て、台湾の人々が郊外で自然体験をする楽しさや魅力に気づき、価値観の変化が生まれたのだと捉えています。

データでもそれは顕著に表れていて、2019年時点では総売上の中でトップ10に入る商品が占める割合が50%を超えていましたが、2021年にはそれが約1/3まで減少しています。これはお客様のニーズが分散・多様化したということです。傾向としては自然体験型に人気が集まってきているので、日本においても、アドベンチャートラベルのような自然体験ができるものを用意すると、台湾人旅行客にヒットすることが増えるのではないかと思います。

―台湾からの観光客を多く呼び込むために、日本の受け入れ側に必要とされること、こうあればいいと思うことはありますか?

まず何と言っても「台湾人を恐れない」ということです。日本の事業者さんとよく一緒に仕事をしますが、日本側は相手の言葉がわからない、コミュニケーションが取りにくいというだけで外国人を嫌がるようなこともありました。「台湾でこの旅行商品を売らないでくれ」と言われたこともあります。でも、台湾の人はほとんどが親日派で品行方正な人も多いですし、言葉がわからなかったからといってそれがクレームにつながることはほとんどありません。日本語が話せる人もたくさんいます。言葉の壁に臆することなく、ウェルカムという気持ちでどんどん受け入れてもらいたいですね。

OTAでお客様の目に留まるためにすべきことは、自分たちの魅力を一見でわかりやすく表現することです。そこで体験できる、そこにしかない魅力が何なのかを、“ワンセンテンス&ワンピクチャー”で見せることを心がけてください。景色が魅力なのであれば、売りとなる風景の写真と、そこでできることをわかりやすくインパクトのある言葉で短く表現する。

もし、特化したものが何もないと思うのであれば、繁体字で「来てください、お待ちしています」と書かれた看板を掲げたスタッフの写真を使って、自分たちは台湾フレンドリーであることを謳ってもいい。ひとつ、アイデアをひねり出してみましょう。自分たちが持つコンテンツに自信を持って“ワンセンテンス&ワンピクチャー”で表現することさえできれば、台湾の人たちを呼ぶことはできるんじゃないかと思います。

 

OTAで選ばれる商品づくりをするには

―心構えは改善できたとしても、なかなか他とコンテンツの差別化ができないと悩む事業者も多いと思います。

確かに、一事業者だけで工夫するのは限度がありますよね。それなら、地域の他の事業者の方々と協力してはどうでしょうか。単体ではうまく売れなかったものでも、セットにすることでお客様を呼び込むことに成功した事例があります。「芋掘りができる観光農園」と「バーベキュー場」です。単体では注目されなかったこの2つを一緒にして、自分の手で収穫した芋をその場でバーベキューにして食べるという半日ツアーをつくったら、急に売れ出したのです。組み合わせの妙というほどではないかもしれませんが、これもひとつのアイデアです。

お客様が何を求めているのか、ニーズを汲み取って、自分たちに何が足りないのかを考え、それをアイデアで補完する。これができれば、かなりの人たちにヒットするのではないかと思います。

 

台湾から見た訪日旅行の魅力

金山・汪汪地瓜園(サツマイモ園)窯焼きバーベキュー体験

 

―KKdayはオンライン上で商品を販売するだけでなく、観光資源や商品開発なども行っておられますね。

私たちはただの旅行商品の販売会社ではなく、観光事業者のパートナーでありたいと強く願っています。オンライン上にある数多くの商品の中に埋もれることなく、どうしたら売れるようになるのかというテクニカルなことから、観光事業全体の改善に向けたコンサルティングまで、幅広い業務を行っているのもそのためです。

どうしたら売れるようになるのか、を考えるにあたって取り組んでいただきたいアプローチをいくつかご紹介します。

アプローチ①:商材の差別化を実現する

  1. さきほどのツアーのセット化のように、商材の組み合わせ等により、体験内容の差別化を図る。

アプローチ②:商材に手を加えず、売れるようにする

  1. タイトル:シンプル化する。ニーズのあるワードを入れる。
  2. 写真:特に、最初に表示される一枚を、体験価値を表現する一枚に変える。競合との差別化に繋がる体験価値を一枚で表現する。
  3. 口コミ:口コミ件数を増やし評価を高めるために、体験していただいたお客様に口コミの入力に協力していただけるよう、体験終了後に現地でお声がけをする。口コミを入力するモチベーションとなるインセンティブがあるとなお良い。
  4. 本文:極力、端的に表現する。ニーズのあるワードを入れる。
  5. 価格:明確な競合がいるのであれば、少しでも下回れるとなお良い。

 

当然、これ以外にも、SEOやSEM等の領域でできることなど施策は多々ありますが、まずはこれらのアプローチに関する要素について、改善することでさらに効果アップが見込まれるであろうプランが多いと感じています。

私たちは、事業者の側に立って、必要なソリューションを提供していきたいと考えています。例えば、宿泊施設なら旅行者を受け入れて、気持ちよく過ごして帰途に着いてもらえればそれでOKと思う人が多いと思いますが、SNSで好印象のクチコミをしてもらうまでを戦略として考えた方がいい。台湾人は日本人よりもSNSでの発信力が高く、クチコミを参考にする人はとても多いです。数人でもいいので、宿泊施設の魅力を感じてもらってSNSで発信してもらえば、それが雪だるま式に多くの人に広がるといったことは、台湾ではよくあることです。

また、KKdayは旅行業の事業者に対して基幹システムなども提供しています。システムは個別にカスタマイズすることも可能で、売上のアップやコストダウンなど事業者が求めるソリューションを提供しています。

つまり、ITをうまく活用するためには、それを使いこなしている人としっかり連携していく必要がある。それが成否を分けるポイントとまで言えるかもしれません。そうしたことも含めて、われわれは一販売者ではなく、事業者の抱える課題を掘り下げることができるパートナーでありたいと考えています。

―ウィズコロナ・アフターコロナのフェーズで、台湾から日本への観光意欲は以前と変わりなく戻ってくると思いますか?

台湾では親日感情がますます高まっているので、今、日本へ旅行したいという気持ちを抑えている分だけ、大きなリバウンドが来ると思っています。2022年9月末に、日本政府が外国人観光客の入国にあたって入国者健康確認システム(ERFS)での申請を求めないことになりましたが、それ以前にERFSをKKdayで代行するインセンティブを付けた日本旅行キャンペーンを打ったときには、まだいつ日本に行けるかわからない状況だったにも関わらず1,000件以上の申込があって、私自身、その熱量の高さに驚きました。台湾の人たちが日本に行ける日が来たときに、速やかに、かつスムーズに旅行者を誘う役割をKKdayが果たしていきたいと思いますし、それを通じて日本を元気にしたいと考えています。


KKdayグループ 日本支社副社長 深井洋平
東京大学農学部卒。電通、経営コンサルティングなどを経て、台湾最多軒数を運営するホテルチェーン「Green World Hotels」のCEOに就任。4年連続赤字から就任1年目にして黒字転換を果たし、再建。2021年3月から株式会社KKday Japanに参画し、観光業における経営およびマーケティングの知見をもとに、国内外問わず業界が抱える課題解決に取り組む。


OTA特集第1弾(中国編)はこちら。

 第3弾(欧米豪)はこちら。