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丸亀の訪日インバウンドの未来を考えるワークショップ

丸亀の訪日インバウンドの未来を考えるワークショップ

丸亀の訪日インバウンドの未来を考えるワークショップ

2017年12月5日、香川県丸亀市にて、「丸亀の訪日インバウンドの未来を考えるワークショップ」が開催され、丸亀城のボランティアガイドを務める方や香川大学に通う現役大学生、売り出し中のお笑い芸人など、実にバラエティ豊かな37名が集いました。

インバウンドを成功させ、街に活気を取り戻したい!

香川県丸亀市は、県内屈指の観光スポットでもある金刀比羅宮(こんぴらさん)の参道口として栄えた街。丸亀城や丸亀うちわなどで知られ、近年は、ご当地グルメの骨付鳥でも注目を集めています。

その一方で、「少子高齢化が進み、街全体の活気が低下しつつある」という問題点も。解決のためインバウンドの取り組みを始めましたが、「初期段階のため、なにがボトルネックになっているのかが見えていない」「観光コンテンツそのものが不足しており、認知度も低い」「地域のプレーヤーや取り組みへの理解が不足している」など悩みが多く、スムーズに進んでいるとは言い難い状態が続いていました。

数々の悩みをクリアにしてインバウンドを軌道に乗せ、街に活気を取り戻したい――。そんな思いで開催に至った今回のワークショップ。丸亀市は平成31年度に観光地域づくりを行うDMOを設立することを目指しており、その第一歩としても機能させたいという思いで実施されました。

香川県は外国人宿泊者数の多い、四国のインバウンド人気エリア

今回の会場となった丸亀市生涯学習センターは、丸亀駅から徒歩10分程度のアクセスの良い場所。丸亀城からもほど近く、まさに“丸亀観光の中心”と言える好立地です。

まずはJNTOの山崎道徳理事が登壇し、インバウンドの現状や傾向を丁寧に解説していきます。四国4県のなかで香川県がもっとも多くの外国人宿泊者を集めていること、広島や岡山といった近県に比べ圧倒的にアジア人宿泊者が多いことなどが説明されると、驚いたような表情を見せる参加者も。熱心にメモを取る人の姿も多く見受けられました。

その後は各グループで、簡単な自己紹介と会社名を決める相談へ。株式会社創造開発研究所の髙橋誠氏がファシリテーターを務め、和気あいあいとした雰囲気のなか話し合いが進められていきました。なかには「#丸亀(ハッシュタグまるがめ)」「丸亀カメCOM(まるがめカメカム)」といった、WebやSNSを意識したユニークな会社名も! 短時間でスムーズに全6グループの会社名が決まり、準備が整いました。

和気あいあいとしたムードで進むワークショップ

 

周辺地域とコラボすれば、大きな変化が期待できる

続く座学に登壇したのは、株式会社JTB総合研究所の後藤直哉氏。事前アンケートで「丸亀市でインバウンドに取り組む理由」を聞いたところ、「丸亀の魅力を世界に発信するため」と答えた人がもっとも多かった、という点に触れて、「これは素晴らしい結果。本日参加してくださっている皆さんが、丸亀市のことを心から愛し、誇りに思っているということだと思います」と述べました。

また、丸亀の強みとして、人気の高い瀬戸内地域に近いところ、訪日外国人観光客が多い大阪・広島からアクセスしやすいところをピックアップ。「瀬戸内海の風景は本当に美しい。丸亀市単体で考えるのでなく、瀬戸内地域とのつながりを考えて観光コンテンツやプロモーションプランを立案すれば、ぐっと幅が広がるのではないでしょうか。しかも大阪や広島で観光を楽しんだ観光客は、岡山から瀬戸大橋を通って香川県に入ってくることになりますよね。岡山からマリンライナー(電車)に乗って瀬戸大橋を通るときのなんとも言えないワクワク感、車窓から見える景色の素晴らしさも、立派な観光資源と言えるのでは。こうした周辺要素に対してなんらかの働きかけを行えば、必ず大きな変化があると思いますよ」と力強く会場に向かって語りかけました。

観光資源が少ない地域でインバウンド集客を成功させるには、「少ない資源を、どうすればより魅力的に見せられるか」について考えることが欠かせません。後藤氏が提示した「周辺地域とのコラボ」「つながり」というヒントにハッとした参加者も多かった模様。みな真剣に、頷きながら後藤氏のコメントに聞き入っていました。

 

地元・丸亀市の意外な一面に触れるグループワーク

座学のあとは、いよいよメインコンテンツであるグループワークへ! まずはターゲットを設定し、その後、丸亀市の観光資源をピックアップする作業に入っていきました。王道の丸亀城、丸亀うちわ、骨付鳥などのほかに、地元で人気のパン屋さんや女子サッカーを挙げる参加者も。なかには知る人ぞ知る伝説のモルトバー「サイレンスバー」の名前が挙がり、「長年丸亀に住んでいるのに知らなかった!」「行ってみたい!」という驚きの声で盛り上がるグループもありました。

その他、後藤氏の座学を受けて、丸亀市以外の観光資源を挙げる参加者もチラホラと。広島の民家や瀬戸内海の宿泊施設などを挙げているグループも見受けられました。

その後、ターゲットに刺さりそうな観光資源を厳選し、組み合わせ、観光ルートを設定し、タイトルを付けて「観光コンテンツ」を完成させます。さまざまな職業、年齢のメンバーが集まり知恵を寄せ合うことで、多彩かつ魅力的なモデルツアーが出来上がりました。

丸亀の観光資源をピックアップ

 

丸亀市の魅力を世界に発信する、個性的なプランとは?

休憩を挟んで行われた座学には、株式会社JTBコミュニケーションデザインの久野道広氏が登壇。インバウンドプロモーションの考え方について、丁寧に解説していきました。観光プロモーションを成功させる4つの視点について説明したあと、4大SNSの特徴や活用の5大ポイント、紙媒体やリアルコミュニケーションのポイントをレクチャー。代表的なプロモーション手法とその活用ポイントが網羅的に語られ、とても濃厚な座学になりました。

続くグループワークでは、モデルツアーのキャッチコピーやキービジュアルを策定する作業に挑戦。最初は慣れない作業に戸惑っていた様子だった参加者たちでしたが、思いつく言葉をつらつらと紙に書くうちに少しずつ感覚がつかめてきた様子で、「合言葉のようなキャッチコピーを設定して、それをお店で言うとおまけがもらえるという仕組みにしてはどうだろう」「ハッシュタグを考えて、それをそのままキャッチコピーにしては?」などのアイデアが飛び出していました。

約2時間の作業ののち、ついにモデルツアーとそのプロモーションプランが完成。最後は6つのグループが、それぞれ思い思いのプレゼンテーションを行いました。

ワークショップ終了後には参加者から、「生まれ育った丸亀のことをじっくり考えられた」「今回6チーム参加して6つのプロモーションプランがあったのですが、そのなかでひとつでも、今後、実現できたら面白いと思いました」といったポジティブなコメントが。完成度の高いプランがずらりと揃った今回のワークショップ。近い将来、ここから生まれたプランたちが、丸亀や香川を大いに盛り上げることになるかもしれません。

「あなたが考える3年後」シートを手にする参加者の皆さん

 

各グループの発表内容

・#丸亀

「#setouchigram」

ターゲットは30~40代の旅慣れた香港女性。丸亀駅付近で骨付鳥を味わったあと、フェリーで本島、牛島を巡り、牛島のゲストハウスに1泊するプランを考えました。翌日は和菓子作り体験やうちわづくり体験を楽しみ、中津万象園を見学。最後にゆっくりと和食を味わいます。キャッチコピーは「日本一小さな県のフォトジェニック Art Setouchi」。フォトジェニックをテーマに瀬戸内の芸術をプロモーションし、香港のインフルエンサーとコラボして発信したいと考えました。キービジュアルは美しい日の出と夕焼けの動画。映像や写真の美しさで勝負します。

#丸亀

・丸亀カメCOM

「なんができよんなMARUGAME」

ターゲットは夫婦・親族など5~6人連れの台湾リピーター。日本に関する知識が豊富で歴史・文化に関心が強いと想定し、「なんができよんなMARUGAME」というプランを考えました。スタートは中津万象園なのですが、あとは場所に関する説明を簡単にして、「自由にまわってください」というスタンス。地域の人に「なにができよん?」といったことを話しかけていただいて、起こったことを楽しんでもらいたいと考えています。2日目は飯山の桃や市内有名店のパンを味わい、スーパーでどじょうを買って市民と一緒に調理するイベントを楽しむなど、地元密着のグルメ体験を堪能してもらいます。キャッチコピーは「『なにができよん?』が合言葉」。丸亀市の人に「なにができよん?」と声をかけて返ってきた回答や起こったことを「#なにができよん?」でSNSにアップしてもらい、それが拡散することでプロモーションができるといいなと考えています。

丸亀カメCOM

・FUN-FUNツーリスト

「ゆっくりかめさんツアー」

ターゲットは米国のビジネスマン。とにかくゆっくりしていただきたいと思い、比較的ゆるやかなツアープランを考えました。1日目はうちわづくり体験や中津万象園の見学、MIMOCA(猪熊弦一郎現代美術館)での芸術鑑賞を楽しんで、伝説のモルトバー・サイレンスバーで一杯やり、ゲストハウス・ウェルかめに宿泊。2日目は丸亀の有名店でパンを買い、本島を観光、最後に丸亀城を見学して終了。キャッチコピーは「ハートが丸くカメな旅」。キービジュアルはカメのイラストと写真を組み合わせたコラージュ的なものに。ビジュアルを使ってホットコーヒーのスリーブやハンバーガーの包み紙などを制作し、お店に配布して宣伝につなげたいと思っています。

FUN-FUNツーリスト

・丸亀商店

「魅惑のキャッスル&アイランド」

小学生ぐらいの子どもがいる米国ファミリーがターゲット。丸亀城と島を中心にしたプランを考えました。1日目はたっぷり丸亀城を観光し、うちわづくり体験や人力車での散策を楽しみます。2日目は中津万象園、本島などを観光し、地引網体験や島民とのふれあいを堪能。キャッチコピーは「いろんな日本一を丸亀で体験!」。キービジュアルには、二人乗り自転車で海岸線を走ったり、うちわづくり体験を楽しんだりしている外国人ファミリーの写真を使用します。来日した外国人の目に触れるよう、機内誌への広告掲載、交通広告の掲出を考えています。

丸亀商店

・人力社

「丸亀最強いたれりつくせり」

ターゲットは台湾の独身富裕層。異性との出会いを意識したツアーを立案しました。1日目は異性とうちわづくり体験に取り組み、異性と人力車に乗り、そして居酒屋でフリートークをするという婚活的プラン。2日目はレンタサイクルでこんぴら街道を走り、Pikaraスタジアムでスポーツやお祭りを楽しみ、そして太助灯籠の前で連絡先を交換してもらいます。カップル成立ならなかった場合は、最後にボートレースまるがめに行き憂さ晴らしをして終了。キャッチコピーは「私の隣空いてますよ…ぼくの隣も空いてますよ」。Instagramや動画を活用してプロモーションを展開します。

人力社

・だるま企画

「丸亀まるごと満足ツアー」

30~40代の香港女性がターゲット。「丸亀まるごと満足ツアー」と題し、丸亀の主な観光スポットを端から巡ります。1日目は、レオマワールド、飯野山、美術館、丸亀城を巡り、うちわづくり体験をして広島の民泊に宿泊。時間がないので、レンタカーから眺めるだけの観光スポットもありますが、それはそれということで……。2日目は骨付鳥を食べ、ボートレースまるがめに立ち寄り、中津万象園を見学、ショッピングを楽しむなどして高松空港へ。キャッチコピーは「こころも おなかも 満タンに」。キービジュアルに骨付鳥のマスコットキャラクター・とり奉行骨付じゅうじゅうを起用し、インフルエンサーとコラボし動画配信をしてもらうなどの方法でPRします。

だるま企画

 

発表の講評

・株式会社JTBコミュニケーションデザイン 久野道広氏

「ビジュアルが他の地域のワークショップよりも具体的に出てきたところが素晴らしいなと感じました。また、スローなツアーあり、弾丸ツアーあり、コンセプチュアルなツアーや、パロディのような笑えるツアーありと、ターゲットによって見事にツアー内容が変化しているところもよいなと思いました。キャッチコピーの完成度も高く、なかにはこのまま出せるのではないかと思うようなプロ並みのものも。今後の展開が非常に楽しみです」

・株式会社JTB総合研究所 後藤直哉氏

「冒頭で『外国人の視点に立ってプランを考えてみてください』とお願いしましたが、実際にやってみて、なかなか難しいと感じたのではないかなと思います。ただ、こうしてちょっとでも外国人視点で考えるということをやってみることで、明日から、外国人の方が目に付くようになると思うんですよね。これをきっかけに、ぜひ外国人の方の動向に目を向けていただいて、今後のプランづくりに役立ててください」

・フリーライター ノーアム・カッツ氏

「うちわづくりや人力車に乗っての散策など、体験が盛り込まれているところがいいなと感じました。外国人にとって体験というコンテンツはとても魅力的なもの。体験することで丸亀が、忘れられない場所になると思います。日本人が当たり前だと思っていることやものが、外国人にとっての興味の対象となることは少なくありません。コミュニケーションしたいという気持ち大切に、外国人観光客と積極的に関わっていただけたらと思います」

・JNTO理事 山崎道徳

「今回で7会場目の開催になりますが、とても素晴らしい内容でした。丸亀人の気質なのかな、とも思うのですが、コンセプトが明確で、なおかつターゲットに対して直球でボールを投げている。わかりやすく面白いプランばかりで、アドバイスのしようがないぐらいよくできているなと感じています」

ワークショップの内容を視覚的に記録したグラフィックレコーディング

 

ワークショップスライド画像
1.インバウンドの動向・トレンドについて
2.ワークショップの流れ
3.座学①インバウンドを想定したコンテンツとターゲット層の検討
4.座学②インバウンドプロモーションの考え方