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糸魚川の訪日インバウンドの未来を考えるワークショップ

糸魚川の訪日インバウンドの未来を考えるワークショップ

糸魚川の訪日インバウンドの未来を考えるワークショップ

11月29日に、新潟県糸魚川市で「糸魚川の訪日インバウンドの未来を考えるワークショップ」が開催されました。糸魚川市役所職員、宿泊施設、観光施設、旅行会社など観光業に携わっている方をはじめ、総勢30名が参加しました。約5時間にわたって行われたワークショップの様子をレポートします。

近隣県よりも外国人観光客の宿泊が少ない現状を、挽回したい!

きれいな海と大地に囲まれた自然豊かな糸魚川は、紅ズワイガニやあんこう、コシヒカリ、地酒など、多くの特産品で知られています。また、日本随一のヒスイの産地であること、日本列島を横断する断層線「フォッサマグナ」があることから、日本で初めてユネスコ世界ジオパークに指定されました。さらに、北陸新幹線の開通で東京からのアクセスが飛躍的に向上するなど、インバウンド集客を加速させる条件は充分揃っていると言ってよいでしょう。

しかし参加者は、多くの人に楽しい体験の場を提供したいという熱い思いを持っているものの、「効果的なプロモーションの方法がわからない」「言語の問題もあり、外国人とのコミュニケーションに不安がある」といった悩みも抱えています。

最初に登壇したのは、JNTOの山崎道徳理事。不安を解消するため、訪日インバウンドを考えるにあたっての基礎知識を伝授します。近年の動向データを紹介し、「まずは、外国人旅行客のニーズをつかむことが大切です。新潟はスキーを目的とした欧米からの観光客が多いので、これを手掛かりにインバウンド客を増やしていくのがよいのではないでしょうか」とアドバイスしました。

続いて、ファシリテーターを務める株式会社創造開発研究所・代表取締役会長の高橋誠氏によって、今回のグループワークのルール説明がなされました。ワークは同じテーブルに座った5~6人のグループ単位で行います。糸魚川を世界にPRする会社の社員という想定のもと、外国人観光客のための1泊2日の糸魚川ツアーのプランを立案するのが今日の課題です。メンバー同士で自己紹介を行った後、早速各グループの会社名を話し合いました。

糸魚川に“来ないや~”という意味が込められた「株式会社KINAIYA」、ヒスイをテーマにした体験ができる「ジェイドストーリー」(ジェイド=ヒスイの意)、寒い雪国でも心は温まってほしいという願いから「Heart of Japan – Itoigawa」、田舎とカンパニーを組み合わせた「いなCompany」、地元特産の魚“ノロゲンゲ”を会社名にした「NKK(ノロゲンゲ株式会社)」。土地の魅力を端的に表現したユニークな会社名が続々と飛び出しました。

和やかなムードで進むワークショップ

 

豪州、欧米からの個人旅行者にニーズあり!? さまざまなターゲット層を探

各グループの会社名が決まったところで、いよいよ最初の座学がスタート。テーマは、「インバウンドプロモーションにおける糸魚川の課題共有」です。講師の株式会社JTB総合研究所の吉口克利氏からは、「プロモーションはターゲット設定が大切です。新潟県には魅力的な観光資源があるのに、外国人の宿泊数は近隣県を下回っています。彼らを素通りさせないためには、まず、糸魚川の観光コンテンツにどんな人が興味を持ってくれそうなのか考えてみましょう」との提案がありました。そこで、糸魚川を訪れる外国人観光客について、参加者に現状を報告してもらうことになりました。

「スイスからのお客様を多く見かける」という声が挙がりました。さらに「スイスからの観光客は、特に春から秋が多い。冬はスイスにも雪があるからか、ほとんどいないようだ」「冬になると糸魚川駅周辺でオーストラリアからの観光客をよく見かける」「フランスやドイツからも少しずつ増えているようだ」といった情報も集まりました。

そこで、これらを踏まえ、次のワークでは体験ツアーのターゲットを具体的に考えてみることに。「ウインタースポーツのメッカ、豪州からの需要は見込めそう」「糸魚川のヒスイと歴史的関係性が深い韓国からの観光客をターゲットにしてみたい」などさまざまな意見が交わされ、各グループの方向性が少しずつ固まっていきました。

次に、1泊2日の観光ツアーを構成する観光コンテンツを列挙していきました。ヒスイ海岸やフォッサマグナミュージアムといった観光名所はもちろん、中には、「学校と桜」「おじいちゃん、おばあちゃん、おばちゃん」「囲炉裏」「除雪車」など日常生活に根づいたキーワードも!

糸魚川の観光コンテンツを書き出す

 

お客様には必ず“ニーズ”がある! リピーター客を増やす施策を練る

休憩をはさんで後半は、「インバウンドプロモーションの考え方」と題した講義からスタート。株式会社JTBコミュニケーションデザインのコンサルタント宮口直人氏が登壇し、「より多く呼び込みたいのはリピート客。彼らが“糸魚川は素敵な場所だよ!”と、友達に勧めたり、SNSで発信したりすれば、お客様はさらに増えます」と解説。さらに、「プロモーションするうえで大切なのは、お客様の“ニーズ”をつかむこと」だと強調しました。

また、「プロモーションの手法は、SNSやブログ、ウェブサイト、パンフレット、さらには接客・コミュニケーションなど、さまざまあります。それぞれの手法の特徴をつかんだうえで、最適な方法を組み合わせると効果的です」と、具体例をもとにわかりやすくレクチャー。普段あまりスマートフォンに触れたことのない方からは「旅行者のSNS投稿もプロモーションになるのか!」といった声も挙がりました。

座学終盤では、「キャッチコピーとビジュアルも大切です。日本人には注目されるキャッチコピーだとしても、海外の方には通じないことはよくあること。ターゲットとなる外国人の目線で考えるとよいでしょう」と、この後のグループワークのヒントも投げかけられました。

プロモーションについて意見を出し合う参加者の皆さん

 

ユニークな企画がまとまり、いよいよ発表へ!

「ターゲット層の目を引くキャッチコピーとビジュアルを考えよう」というテーマが与えられ、グループ内では早速ディスカッションが交わされました。「外国人もダジャレが好きなのではないか?」「ビジュアルには、インパクトのある色を象徴的に使いたい」など、楽しいアイデアがどんどん生まれていきました。

さらに、さまざまな観光資源をストーリー仕立てに並べる作業も行われ、まとまったアイデアが「ワークショップまとめシート」に書き込まれていきます。全員のシートが揃ったところで、今度はグループで意見を精査し、プレゼンテーションのための「発表シート」を作成しました。

ワークショップの最後には、実は「中小企業診断士」という肩書きで新潟県副知事の益田浩氏がグループワークに紛れていたことが明かされました! 参加者からは「さまざまな視点から、糸魚川の観光資源に着目することができた」「新しい気づきが多くインバンドにやる気が出た」「今後は、ガイドスタッフの語学力トレーニングを強化したい」「糸魚川に長期滞在する欧米のお客様を増やすために、今後もインバウンドを真剣に考えていきたい」など、さまざまな声が聞かれました。

外国人観光客の受け入れを始めて7年という糸魚川。今日のワークショップで得たノウハウを活用してインバウンド集客が進み、地域が発展していくことを願っています。

ワークショップを通じて糸魚川の魅力を再発見!

 

各グループの発表内容

・株式会社KINAIYA

シーフードトレジャー&プレジャー「おいSEA&楽SEE 来てほしい ~糸魚川ツアー」

シーフード、日本酒、温泉など、日本の文化に興味がある20~40代のオーストラリア人に向けた企画。酒蔵の見学・試飲、地元B級グルメの代表格・イカとイカスミを使った「ブラック焼きそば」、懐かしい味わいの「平沢コロッケ」を味わうほか、能生漁港での昼セリ見学などを予定。温泉宿での宿泊や、名物となっている冬サーフィン(!)や相撲などの体験も盛り込みました。飛行機の機内食で糸魚川のお酒を提供し、海外の方にアピールします。

株式会社KINAIYA

・ジェイドストーリー

体で感じる5億年「ツール・ド・ジェイド」

「いにしえの時代から糸魚川にあったヒスイと、ドイツの文化を組み合わせました」というのが、このツアーのコンセプト。自転車大国・ドイツからの観光客を誘致するためのプランです。移動手段は主に自転車。ヒスイ海岸、フォッサマグナミュージアム、温泉などを自転車でめぐるほか、最終日には自転車を降りてヒスイにまつわる伝説をたどります。瀬戸内海にあるサイクリングロード「しまなみ海道」と連動して各種プロモーションを行います。

ジェイドストーリー

・Heart of Japan – Itoigawa

スキーだけじゃもったいない!雪国人になろう!!「心も体もあたたまる リアル雪国体験ツアー」

白馬でスキーを楽しんだオーストラリア人ファミリーに、“自分たちだけの”体験を提供します。ハイライトは早朝の雪国体験。除雪車の乗車、雪かき、雪下ろし、かんじきでの道踏みなどにチャレンジ。その後のランチは、民家の囲炉裏を囲み、笹ずしや山菜といった地元料理を堪能。さらに、温泉、酒蔵見学、相撲見学、あんこう、鮮魚、カニ、地酒など、糸魚川の魅力を詰め込みました。白馬エリアの各スキー場と連携して、白馬旅行とセットで販売する予定です。

Heart of Japan – Itoigawa

・いなCompany

日本の中心で愛を誓う「花 Honeymoon」

花の“草かんむり”をHに見立て、ツアー名は「花ムーン」と読みます。欧州からハネムーンで訪れる観光客をターゲットにした、春の糸魚川を「桜」をテーマにのんびりとめぐるプラン。和文化に親しみたいという彼らのニーズに応え、着物を着てお花見ができる企画を用意しています。また、ハネムーンにふさわしい、ロマンティックな絶景ポイントも散策。YouTubeに動画を配信し、世界各国のカップルに糸魚川の魅力を伝えていきます。

いなCompany

・NKK(ノロゲンゲ株式会社)

愛と歴史をつなげる!!「紅(赤)と翠(みどり)でつながる絆(ジオン)旅」

ターゲットは、30代前後の韓国人カップル。「韓国から出土されるヒスイは、そのほとんどが糸魚川から渡ってきたもの」というほど、古くから糸魚川と韓国の関係性は深いとされます。ツアータイトルに紅ズワイガニの赤とヒスイのみどり色という対照的な2色を使い、カップルの絆、そして、糸魚川と韓国の絆を表現。プロモーションのメインビジュアルは、ヒスイの勾玉でつくったハートマークをデザインしたもの。韓国のフリーペーパーのほか、韓国語のウェブサイトも充実させます。

NKK(ノロゲンゲ株式会社)

 

発表の講評

・株式会社JTBコミュニケーションデザイン 宮口 直人氏

「民家でのお茶の間の交流、雪かき、除雪など、これまでにない観光資源に着目したグループが多くて驚きました。今度も、こういった“注目されていなかった観光資源”を、たくさん掘り起こしてほしいと思います。それが、糸魚川の“オンリーワン”に繋がります!」

・外国人ジャーナリスト ホイ・セリナ氏

「観光ツアーをつくるときには、常にストーリーの繋がりを意識してください。歴史、食事、自然はすべてストーリーで繋がっています。ユニークなストーリーを聞くと、SNSでシェアしたくなり、そして実際に足を運んでみたくなるはずです」

・新潟県副知事 益田浩氏

「ワークショップに急きょ欠員が出たということで参加させていただきました。現在はまだ近隣の長野県、石川県に比べてインバウンドに弱い県ではありますが、これから皆さんと一緒にしっかり考えていければと思っています」

・JNTO理事 山崎道徳

「冬にサーフィンができるという強烈なコンテンツや、民家でのふれあい、雪国体験に着目するなど、するどい視点で考えられた企画がたくさん並びました。今回のワークショップで終わることなく、1年後、3年後を見据えて取り組んでいただきたいです。糸魚川のインバウンドがどのように発展していくのか、非常に楽しみにしています。今日はどうもありがとうございました」

ワークショップの内容を視覚的に記録したグラフィックレコーディング

 

ワークショップスライド画像

1. インバウンドの動向・トレンドについて
2. ワークショップの流れ
3. 座学① インバウンドを想定したコンテンツとターゲット層の検討
4. 座学② インバウンドプロモーションの考え方