2023年7月20日
高付加価値旅行の取り組み強化で消費額拡大と地方誘客を目指す!JNTOに専門組織を立ち上げました
JNTOでは高付加価値旅行、アドベンチャートラベル(AT)およびサステナブル・ツーリズムをより強力に推進するため、2023年4月に高付加価値旅行推進室を立ち上げました。今回は、その発足の背景と主な取り組み内容をご紹介します。
1.高付加価値旅行推進室立ち上げの背景
新型コロナウィルス感染症の発生以前の訪日外国人旅行者数は、順調に伸びており、2019年には過去最高を記録しました。しかしながら、観光消費額は伸び悩んでおり、消費額増へ向けた取り組みの必要性が迫られていました。この課題解決に向けた戦略を検討すべく、観光庁では、2020年に「上質なインバウンド観光サービス創出に向けた観光戦略検討委員会」を、2021年にはそれを継承する形で「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり検討委員会」を設置し、ウリ・ヤド・ヒト・コネの4分野等に関して総合的な施策を講じていくことを目指して、有識者を交えた議論を行い、その検討成果を2022年5月に「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくりに向けたアクションプラン」として取りまとめました。このアクションプランでは、高付加価値旅行の取り組みには、高度なノウハウとネットワークが必要であることから、JNTO内に専門組織を設置し、様々な施策に取り組むことが提言されました。
高付加価値旅行の推進は、2023年3月に閣議決定された観光立国推進基本計画(第4次)の中で挙げられた目標である、「訪日外国人旅行消費額5兆円」の早期達成、「訪日外国人旅行消費額単価20万円」および「訪日外国人旅行者一人当たり地方部宿泊数2泊」の2025年までの達成においても重要な役割を担っています。
前述の「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくりに向けたアクションプラン」では、高付加価値旅行者とは、「単に一旅行当たりの消費額が大きいのみならず、一般的に 知的好奇心や探究心が強く、旅行による様々な体験を通じて地域の伝統・文化、自然等に触れることで、自身の知識を深め、インスピレーションを得られることを重視する傾向にある。」とされています。このような旅行者が志向する旅行はATTA(Adventure Travel Trade Association)※1が定義するアドベンチャートラベル※2とも親和性が高いこと、また、高付加価値旅行者、アドベンチャートラベラーとも持続可能性に対する意識が高いことから、JNTOでは、高付加価値旅行に加え、アドベンチャートラベルとサステナブル・ツーリズムも一体となって推進するため、高付加価値旅行推進室を立ち上げるに至りました。
※1 アドベンチャートラベルに関する最大の団体。1990年設立、本部は米国・シアトル。メディア、政府観光局、観光協会、DMO、ツアーオペレーター、アウトドアメーカー等、約100か国1,300会員により構成。https://www.adventuretravel.biz/
※2 アドベンチャートラベルとは、アクティビティ、自然、文化体験のうち2つ以上で構成される旅行
2.高付加価値旅行推進室の主な取り組み
JNTOでは、消費額の向上と地方への誘客促進に向け、高付加価値旅行推進室が司令塔となり、先日公表した「市場横断マーケティング戦略」に沿って、各海外事務所と一体となり以下の取り組みを行っています。
- 高付加価値旅行
「地方における高付加価値なインバウンド観光地域づくりに向けたアクションプラン」に基づき、国内関係者のネットワーク化、サービス内容の収集・蓄積、セールスの強化、情報発信の強化の4点に加え、高付加価値旅行者に対応できるガイドの育成を行います。
このなかでも「国内関係者のネットワーク化」は、今年度より本格化させるべく、JNTOが主催する国内でのセミナーの場も活用し、積極的に各地域の高付加価値旅行者誘客を目指す皆様のコミュニケーションの機会を設けています。
前述のとおり、高付加価値旅行の推進には、高度なノウハウとネットワークが不可欠であることから、JNTOと地域の皆様のみならず、地域の様々なサプライヤーの皆様やDMC(Destination Management Company)の皆様、また、地域の皆様同士が有機的につながるような施策を実施し、確実に誘客につなげていきたいと考えています。
出典:地方における高付加価値なインバウンド観光地づくりに向けたアクションプラン(観光庁)
- アドベンチャートラベル
アドベンチャートラベルの市場規模が大きい北米、欧州、豪州の関心層をターゲットに、アドベンチャートラベルのデスティネーションとして、2025年にアジア№1となることを目指し、「アクティビティ」と「文化体験」を組み合わせた日本ならではの魅力を旅行会社、メディア、一般消費者に発信していきます。特に、今年は9月に北海道において、アドベンチャートラベル・ワールドサミット(ATWS)が開催されるため、この好機を捉え、ATWSの主催団体である、ATTAおよび日本各地の関係者と連携して、地方への誘客促進や情報発信を強化していきます。
- サステナブル・ツーリズム(持続可能な観光)
国際認証等を取得した地域や持続可能性を高める観光コンテンツをサステナビリティへの関心の高い層に向けて発信を行うとともに、国内外の先進事例をセミナーやウェブサイトを通じて、国内関係者へ情報提供を行うことで、国内での取り組みのさらなる活性化と、日本の国際的プレゼンスの強化を目指します。また、高付加価値旅行推進室のみならず、JNTOの様々なプロモーションにおいて、サステナビリティを意識した活動を行ってまいります。
3.国内関係者との連携強化
高付加価値旅行推進室では、海外向けのプロモーションはもとより、これまでご紹介してきたとおり、国内関係者の連携を非常に重視しています。皆様の中には、既にある程度取り組んではいるものの、今後の方向性を決めかねている地域から、何から取り組めばよいか分からない、そもそも高付加価値旅行とは、アドベンチャートラベルとは何なのか?取り組む必要があるのか?と悩まれている地域まで、様々かと思います。
そこで、それらの悩み解決の一助となるべく、2023年度は一年を通して、以下の機会を設ける予定です。JNTOが持つノウハウや情報はしっかりお届けしながら、皆様が抱える課題をお聞きし、一緒に解決策を考えていきたいと思います。
次の一歩を踏み出すためにも、ぜひ、ご参加ください。
【自治体・DMO・インバウンド従事者向け】
JNTOが全国10地域で開催するインバウンド研修会(初級者向け)の中で、高付加価値旅行、サステナブル・ツーリズム、アドベンチャートラベルのいずれかをテーマに、講演を行います。
開催概要や申し込み方法等の詳細は、下記ページをご参照ください。各地域、開催日の1カ月前から詳細を掲載いたします。
/projects/regional-support/news.html
インバウンド研修会開催日
9月20日(水) 中国 (高付加価値旅行)
9月27日(水) 沖縄 (高付加価値旅行)
10月3日(火) 九州 (サステナブル・ツーリズム)
10月12日(木) 四国 (サステナブル・ツーリズム)
11月10日(金) 近畿 (サステナブル・ツーリズム)
11月28日(火) 関東 (サステナブル・ツーリズム)
【JNTO賛助団体・会員向け】
賛助団体・会員様向けには、年間を通してのコンサルティング対応やインバウンドフォーラム(2023年9月6日(水)-7日(木))での個別相談を実施いたします。また、テーマ別相談会では、テーマの一つとして「高付加価値旅行」「サステナブル・ツーリズム」「アドベンチャートラベル」を予定しています。
いずれも、賛助団体・会員専用サイトからお申込みいただけます。
4.地域の皆様へのメッセージ
今回、高付加価値旅行、アドベンチャートラベル、サステナブル・ツーリズムの取り組みを紹介いたしましたが、必ずしもこの枠に収まらずとも、インバウンド誘客、ひいては、観光業界全体としてより価値の高い旅行体験の提供を目指していくことは、避けては通れないと考えています。
素晴らしい体験を提供し、適切な対価をいただき、有能な人材を雇用し、それがまた素晴らしい体験の提供につながる、という好循環は理想だが、現実的には難しいとお考えになる方も少なくはないと思います。しかし、JNTOではそれを実現したいと考えています。そして、その中心的役割を担うのは、JNTOではなく、各地域や各サプライヤーの皆様です。そのために、JNTOでは何ができるか、何をやるべきかを日々考えていますが、まだまだ力不足な部分もあると思っています。
今年度は様々な場所でお会いする機会が増えますので、ぜひ、JNTOに期待することについてもご意見をいただき、インバウンド誘客が真に地域活性化につながるよう、皆様と一緒に試行錯誤していきたいと思います。
ぜひ、引き続き、JNTOと高付加価値旅行推進室をよろしくお願いいたします!
参考リンク
地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり検討委員会
https://www.mlit.go.jp/kankocho/joushitsu.html
高付加価値旅行者の誘客に向けて集中的な支援等を行うモデル観光地11地域を選定しました
~地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり事業~
https://www.mlit.go.jp/kankocho/news03_000235.html