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生成AIに選ばれる観光情報とは?JNTOが考える訪日旅行者向け多言語ウェブサイト改善のポイント

生成AIに選ばれる観光情報とは?JNTOが考える訪日旅行者向け多言語ウェブサイト改善のポイント

生成AIに選ばれる観光情報とは?JNTOが考える訪日旅行者向け多言語ウェブサイト改善のポイント

生成AIの急速な普及により、訪日外国人旅行者の情報収集行動は大きく変化しています。旅行先の検討や計画づくりにおいて、従来のウェブ検索に加えて「まずは生成AIに相談する」スタイルも広がりつつあります。一方、生成AIが回答を生成するには、参照元となる情報が欠かせません。そこで今回は、JNTO企画総室デジタルマーケティングセンター シニアアシスタントマネージャーの福井千尋より、訪日外国人旅行者の情報収集行動の変化や多言語ウェブサイトに求められる役割、改善ポイントをご紹介します。自地域がターゲットとする旅行者に、地域の魅力や実用的な情報を届けるためのヒントをお伝えします。

※所属部署・役職は取材当時の情報です。

生成AIの普及で変わる、訪日外国人旅行者の情報収集

― 訪日外国人旅行者の情報収集行動は、これまでと比べてどのように変化していますか。

旅行者の行動の流れをカスタマージャーニーに沿って見てみますと、日頃の何気ない生活の中で旅行への憧れが生まれる「インスピレーション」の段階では、引き続きソーシャルメディアや動画サイトの影響力が高い状態が続いています。

一方、具体的な旅行の検討を行う「旅先の決定」や「旅行の計画」といった段階の行動には、変化が見られつつあります。旅行先を比較・検討したり、旅程を作成したりする段階では、従来は検索エンジンや口コミサイトを中心に調べていた内容を、現在は生成AIに相談する旅行者が増えています。web_contents_01.jpg

― 情報収集を行う旅行者の行動において、他に押さえておくべきポイントはありますか。

特に押さえておきたいのは、「ゼロクリック」と呼ばれる現象です。最近のウェブ検索では、検索結果の上部に「AIによる概要」が表示されるケースが増えています。たとえば「JNTOとは」と検索すると、このように生成AIがユーザーの代わりに検索して、要約した回答が示され、情報源となったウェブサイトのリンクも添えられています。

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▲例:Google検索にて「JNTOとは」と検索すると、「AIによる概要」が表示される

しかし、検索画面上の要約だけで必要な情報を得られる場合、ユーザーは情報源となった外部サイトをクリックせず、そのまま検索を終えることがあります。このように、サイトへアクセスすることなく情報収集を完結させる行動が「ゼロクリック」です。ChatGPTなどの生成AIサービスでも、アプリやブラウザ上で質問や検索を行い、回答を閲覧するだけで情報収集を終え、参照元のサイトにはアクセスしないという同様の行動が見られます。

ユーザーにとっては、検索結果の要約や生成AIの回答からすぐに必要な情報を得られる便利な仕組みである一方、サイト運営者にとっては、情報が利用されていてもサイトへのアクセスにつながらないため、情報発信の効果を測りにくくなるという課題があります。実際に私たちが運営するJNTOのウェブサイトでも、ユーザーからのアクセス数の減少を感じているところです。

― 情報収集に「生成AIへの相談」が加わったことで、情報を発信する側にはどのような対策が求められますか。

生成AIがユーザーに回答を提示する際、その情報源となるのはさまざまなウェブサイト上にある情報です。そして、その重要な参照先のひとつが「公式ウェブサイト」です。

SNSの台頭によって、「これからはウェブサイトが見られなくなるのでは」と言われた時期もありました。しかし、生成AIが旅行先の検討や計画にも使われるようになった今、私たちは、ウェブサイトを通じた情報提供があらためて重要になっていると捉えています。

特に生成AIが参照元として信頼を置くのは「一次情報」です。他者の情報を引用するだけではなく、地域や事業者自らが発信する、正確でユーザーのニーズに合った有用なオリジナル情報を公式サイトにしっかり整備しておくことが、デジタルマーケティングにおける有効な対策となります。

訪日外国人旅行者に伝わる多言語ウェブサイト作成の3つのポイント

― 検索エンジンや生成AIを使った検索においても重要視される多言語ウェブサイトのあり方について伺います。JNTOでサイトを作成する際のポイントを教えてください。

JNTOでは、ユーザーである訪日外国人旅行者の目線を最も重視しており、特に次の3つの点を大切にしています。

1. 外国人旅行者目線にこだわったコンテンツづくり

企画段階のテーマ選定から、取材や執筆まで、すべて英語を母国語とするネイティブライターが行っています。また、画像選定も重要で、風景だけでなく、自身がそこを訪れた時のイメージが湧きやすいよう、可能な限り人が写っている写真を選んでいます。企画編集会議を実施していると、とくに欧米のネイティブライターは地域の人々との交流や、サイクリングなどのアクティビティ体験を好む傾向が高いように見受けられます。

2. 日本の地理や地名に不慣れな外国人にもわかりやすい情報整理

日本の地理に詳しくない旅行者のため、必要に応じて、記事内には地図を掲載しています。また、地方のコンテンツ紹介であっても、東京や大阪といった外国人になじみのある都市など、広域からのアクセスを明記することも重要視しています。

3. スマートフォン閲覧を最優先したページ設計

JNTOのウェブサイトでも、スマートフォンからのアクセスが全体の7割を超えています。サイトを開いた最初の画面表示でほしい情報が手に入る設計、スクロールしても視覚的にわかりやすい画像選定、要点を絞った文章量、そして次のアクションへ迷わず進める導線づくりを意識しています。

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事例から学ぶAIO対策―基本は従来のSEOと同じ

― 生成AIが回答を生成する際、どのようなウェブサイトが参照されやすいのか教えてください。

生成AIはウェブサイトをはじめとするさまざまなデジタルデータを参照して回答を生成します。旅行や観光に関する情報では、自治体やDMO、観光事業者などが自ら発信する、正確でユーザーのニーズに合った具体的な一次情報が重要な情報源になります。そのため、公式サイトに所在地や営業時間、料金、アクセス、予約方法などを整備しておくことも重要です。

事業者自身が公式サイトで正確な情報を発信し、継続的に更新することが困難な場合、Googleマップなどに情報を掲載することも有効な選択肢となります。

― 自社サイトやユーザーのニーズに合った一次情報の重要性はよくわかりました。では、生成AIに自社のコンテンツを参照されやすくする「AIO対策」について教えてください。従来のSEO対策とは、どのような違いがあるのでしょうか。 

AIO対策といっても、SEO対策とはまったく別の取り組みを新たに始めるわけではありません。Googleも、従来のSEOのベストプラクティスは、「AIによる概要」や「AIモード」などのAI機能でも引き続き有効であり、特別な最適化は必要ないと説明しています。

つまり、AIO対策の基本は従来のSEO対策と共通しています。そのうえで、ユーザーだけでなくAIにも内容を正確に理解してもらえるよう、これまでのSEO対策を土台に、見出しやページ構成を整理し、具体的で信頼できる情報を充実させることが重要です。たとえば、次のような対策が挙げられます。

・わかりやすい見出しの作成
・FAQの整備
・具体的な固有名詞や数値の提示
・一次情報の明記
・公開日や更新日の明記
・検索エンジンにページの内容をわかりやすく伝える役割をもつ「構造化データ」の活用
・「E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)」の観点を意識した、ユーザーにとって有用で信頼できる情報の発信

また、文章を書く時は、AIにわかりにくいと判断される抽象的な表現を避け、具体的な説明を心がけます。「さまざまな魅力を体験できます」といったあいまいな表現ではなく、施設名や所在地、開業年、最寄り駅からの距離、対応言語、利用可能な決済方法などを具体的に記載します。こうした情報は、ユーザーにとって役立つだけでなく、AIにも内容が伝わりやすくなります。

― JNTOで実際にAIO対策を意識して制作し、AIからの流入数が増えた事例について教えてください。

AIO対策を意識して制作し、実際に成果に結びついた新規記事のひとつは、2025年に公開した、「7 Things You're Not Allowed to Take Home from Japan in 2025(日本から持ち帰ってはいけない7つのもの)」です。この記事は、訪日外国人旅行者が日本から自国へ持ち帰ることが禁止されている代表的な7つのものを解説していますが、成果につながったと考えられる要因は、旅行者の困りごとを解決するというテーマが明確だったことです。さらに、ユーザーの検索意図に応えるわかりやすいタイトルをつけ、具体的な情報提供を徹底できたことが、閲覧数の増加や生成AIからの流入数の増加につながりました。

※7 Things You're Not Allowed to Take Home from Japan in 2025

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― 既存ページを改善して成果が出た事例についても教えてください。

既存ページの改善事例の中から、代表的な事例をふたつご紹介します。いずれも、5年以上前に公開された記事を2025年にリニューアルしました。

1. Shinkansen (Bullet Train)(新幹線)

以前のページは、日本の地理に詳しくない外国人にとって、複雑な路線やジャパン・レール・パス、地域限定パスの違いが理解しにくく、十分にユーザーの助けになっていない点が課題でした。改善にあたっては、走行エリアがひと目でわかる日本地図や、最新の車両や座席の画像を新たに追加し、視覚的にわかりやすいものにしました。さらにページ下部には、「新幹線に乗り遅れたらどうしたらよいか」「特大荷物はどこに収納すればよいか」といった、旅行者が現場で直面する疑問に応えるFAQを追加しました。web_contents_05.jpeg

▲新幹線記事では、各路線が日本のどこを走っているかの図版を追加した

2. Mt. Fuji Climbing Guide(富士登山ガイド)

リニューアルした記事では、それまで複数ページに記載されていた登山ルートの説明を1ページに整理し、端的にまとめた全体概要ページを追加しました。旅行者が各ルートの特徴や登山に必要な情報を把握しやすくするとともに、生成AIにも読み取ってほしい要約部分として構成しています。また、登山に適した時期や時間帯、天候、必要な装備、現地の施設、アクセス、ガイドの必要性、日帰り登山の可否など、旅行者の疑問に答えるFAQを11項目に拡充しました。一問一答形式で具体的な情報を整理することで、旅行者が必要な情報を見つけやすくなるだけでなく、生成AIにも内容が伝わりやすくなります。

「新幹線」「富士登山ガイド」のどちらのページも、こうしたコンテンツの更新後はGoogleアナリティクスのデータにおいて、生成AIサービスからの流入数が増加しています。

※Shinkansen (Bullet Train)
※Mt. Fuji Climbing Guide

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▲富士山記事に、ルートの詳細図版を追加した

既存ページの改善で優先したい3つのポイント

― 多言語ウェブページを見直す場合、まず取り組むべきことを3つ教えてください。

優先度の高い順にお伝えします。まず1点目は、発信の目的を明確にすることです。情報を網羅的に掲載していても、最新スポットの紹介、エリアの楽しみ方の提案、よくある質問など、何を伝えるためのコンテンツなのかが明確になっているかを確認してください。情報量が多く、内容が長くなる場合は、そのページの冒頭に「何がわかるのか」を数行でまとめることが大切です。この概要は、ユーザーにとってわかりやすいだけでなく、生成AIでの検索に内容を正しく認識させるうえでも有用です。

2点目は、タイトルの見直しです。ページの目的に合わせて、ユーザーが検索時に入力したキーワードや質問文の受け皿になるようなタイトルをつけます。「Discover Hidden Gems(穴場スポットを発見しよう)」といった抽象的な表現は使わず、たとえば「10 Hidden Destinations Near Tokyo for International Travelers(東京近郊で外国人旅行者におすすめの穴場スポット10選)」のように、数字や地名、具体的な体験内容を含めたわかりやすいタイトルにすることも大切です。

3点目は、実用情報を整理し、明記することです。スポット情報を伝える場合は、アクセス、営業時間、料金、予約方法、対応言語などをはっきりと簡潔に記載します。エリアの楽しみ方を紹介する記事などで文章が長くなる場合は、「何時間程度で楽しめるか」「1泊2日での滞在がおすすめか」といった概要を冒頭にまとめるとよいでしょう。よくある質問は、一問一答形式で整理するとわかりやすくなります。また、情報の公開日や更新日を明記し、内容を最新の状態に保つことも重要です。ユーザーや検索サービスが、情報の新しさを判断しやすくなります。

― 最後に、全国の地域で情報発信に取り組む方々へのメッセージをお願いします。

外国人旅行者が「この地域の情報をもっと知りたい!」と思った時に決定的に重要な役割を果たすのが、各地域や事業者の皆さまが持つ多言語ウェブサイトです。JNTOでも日本の魅力を伝える情報発信に尽力していますが、日本全国のあらゆる観光情報を網羅することは不可能です。

生成AIの仕組みや各種プラットフォームの仕様が目まぐるしく変化していく中でも、ユーザーにとって価値があるのは、現場や地域にいる方だからこそ届けられる、詳細で正確な一次情報です。ユーザーのニーズを汲み取りながら作成される地域ならではの一次情報は、生成AIが地域の情報を正しく理解するための重要な情報源となるだけでなく、旅行者の興味を喚起し、来訪につながる行動を後押しします。ぜひJNTOと連携を続けながら、丁寧な情報発信を続けていただければ幸いです。

 

〈問い合わせ先〉
企画総室 デジタルマーケティングセンター
digital@jnto.go.jp