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ビフォー・アフターの事例から学ぶ、視聴者の心をつかむ縦型ショート動画制作ポイント

ビフォー・アフターの事例から学ぶ、視聴者の心をつかむ縦型ショート動画制作ポイント

ビフォー・アフターの事例から学ぶ、視聴者の心をつかむ縦型ショート動画制作ポイント

SNSプロモーション手法のひとつとして注目を集める「縦型ショート動画」。訪日インバウンド誘客にも有効な手段として、日本政府観光局(JNTO)では、JNTOの賛助団体・会員を対象に、縦型ショート動画の制作・編集支援を行う事業を実施しました。2023年度から2年に渡り本事業で支援を行ったのは、旅や食をテーマとしたSNS動画の制作・配信を手掛けるTastemade Japan株式会社です。支援に携わった同社の西原さん、本橋さんに、参加した自治体やDMOが制作した2本の動画を例に、参加事業者が制作した動画(ビフォー)と、支援事業者が編集を加えた配信動画(アフター)を比較しながら、視聴者の心をとらえる動画づくりのノウハウなどを伺いました。

広がる縦型ショート動画 SNS非フォロワーにも届く新しい発信スタイル

縦型ショート動画とは、スマートフォンの向きを変えることなく縦にしたままで視聴できる縦横比9:16、動画尺約60秒以内の短尺動画です。主にSNS投稿などに活用されており、日本への誘客促進にも有効なプロモーション手段として重要視されています。

では、なぜ今縦型ショート動画が注目されているのでしょうか?

現在、Instagram(リール機能やストーリーズ機能)、YouTube(Shorts)をはじめとする多くのソーシャルメディアにおいて縦型ショート動画を投稿・視聴できるプラットフォームが整備されています。これまでのSNSは、見たいコンテンツを見るために、「キーワード検索」「チャンネル登録/フォロー」などをする必要がありましたが、現在は、AIによるレコメンド機能(おすすめ機能)の発達により、視聴履歴やユーザーの趣向に合わせた動画を自ら探さなくても次々と視聴できるようになりました。加えて、縦型ショート動画はユーザーの趣向にあった有益なコンテンツであれば、他のユーザーに次々とレコメンドされていきます。このように、レコメンド機能の発達によるSNS上での拡散性の高さが、縦型ショート動画がプロモーション手法として注目されている理由のひとつと言えます。また、縦型ショート動画はスマートフォン1つあれば誰でも簡単に制作することができます。そうした参入障壁の低さも、縦型ショート動画が注目されている要因です。

縦型ショート動画の収集・発信事業とは?

― 縦型ショート動画が人気となっている背景と、訪日プロモーションとしても有効とされる理由を教えてください。 

「縦型ショート動画」は、スマートフォンを縦型のまま視聴できる60秒以内(30秒以内が主流)の短尺動画です。2017年にTikTokで提供されたことをきっかけに、短時間でエンタメ要素の強いコンテンツを求める視聴者のニーズが高まり、2020年にInstagram(リール機能やストーリーズ機能)、2021年にはYouTube(Shorts)でも投稿・視聴できるようになりました。

縦型ショート動画には、アカウントのフォロワーだけでなく、非フォロワーにもリーチするアルゴリズムが組み込まれています。ユーザー画面には、視聴履歴をもとにユーザーの趣向に合わせた動画が次々と流れる仕組みのため、非フォロワーにも見てもらいやすいことが特徴です。このため、訪日客への認知度拡大を図りたい、フォロワーを増やしたい自治体や事業者の方々が取り組むプロモーション手法として、非常に有効です。実際、弊社が行った施策でも、SNS投稿を行った日に商品の検索数が一気に伸びた実績があります。また、スマートフォンひとつで撮影から編集、配信まで行えて、気軽に取り組みやすいという点も魅力です。 

"短く、シンプルに、美しく"が動画制作の鍵 

― 外国人をターゲットにした日本紹介の動画では、どんなものが人気ですか。また、制作するにあたり心得ておく点はありますか。 

海外で注目度が高く、魅力的に映る日本のコンテンツとしては、日本固有の文化や建物、食べ物、日本でしか見られない景色や体験が挙げられます。それらを冒頭に入れ、まず興味を喚起することが重要です。ただし、正直なところ、日本で人気となる動画と、海外で人気となる動画に大きな違いはありません。弊社は本社がアメリカで、日本を含め9の国と地域に展開しており、動画を各国で共有して投稿を行うことがあります。その経験から、国ごとで人気に著しい差が出ることはなく、見て楽しいもの、面白いもの、美しいものが人気を集めます。言葉がなくても見てわかるコンテンツかどうかが、ますます好まれる傾向になっています。 

制作にあたり意識しておくべきは、SNSのトレンドは移り変わりが早いことでしょう。トレンドの音源、動画フォーマット、ハッシュタグなどに敏感になり、情報をアップデートしながら作っていくことが重要です。1ヵ月前に流行っていた音源が数ヵ月後には時代遅れとなることもしばしばです。もう一点、届けたい情報をあれこれ詰め込みすぎないこと。海外の人から見て魅力的なポイントを厳選し、情報過多にならないよう、できるだけ尺をコンパクトにすることを心掛けてください。海外の人が日本のどんなところを魅力に感じるかを理解するには、普段から外国人インフルエンサーなどをフォローし、彼らが日本の観光地をどのように切り取って発信しているかを見て参考にすると良いでしょう。 

本事業に参加いただいた事業者の方々にお伝えした動画制作のポイントについては、2024年に公開された「地域の魅力発信のために縦型ショート動画の制作・編集支援を実施~JNTO縦型ショート動画事業の取り組み~」でも紹介しています。ご参照ください。 

動画事例①から学ぶノウハウ:厳選した映像で、尺はできるだけ短く 

― 本事業で実際に制作された動画を例に、動画制作と編集のポイントを教えてください。その過程にあたり、事業者にどのようなアドバイスを行い、また、提出された動画をどのような観点で編集されたのでしょうか。 

長野県観光機構様 / Exploring Japanese Autumn Through The Color Red 

こちらは、長野県観光機構様が制作した紅葉シーズンにおけるエリアの魅力を伝える動画です。当初は、都心から車で行けるアクセスの良さを伝えたいという相談がありましたが、テロップに文字情報を詰め込んでしまうと、本来伝えたい魅力が薄れてしまいます。細かい情報はすべて投稿本文での補足に回し、紅葉やりんごの「赤」というくくりで動画をまとめることをアドバイスしました。 

構成案をまとめたら、次に撮影です。撮影では、できる限り天気の良い日を選んでください。自然光のバランスがうまくいかないと暗い映像になり、きれいな紅葉の赤が映えません。また、りんご1つ撮るにも、自然光を意識し、さらに、引きで撮ったり寄りで撮ったり、また、青空をバックにしたり、りんごをもいでいるシーンを撮ってみたりとさまざまなパターンを撮影しておきます。

長野県観光機構様が制作した動画は30秒でしたが、最終的には弊社で編集を行い、18秒まで短くしました。30秒以内が主流というのはあくまで目安であり、実際は内容次第です。動画では、赤のモチーフは紅葉とりんごのみ。それだけで30秒続くとユーザーも飽きてしまうため、クオリティが良くない素材、似たようなアングルの素材を抜いて短くしました。先ほど、映像をさまざまなアングルで撮影しておくと伝えましたが、全部を使う必要はありません。誰に何を伝えるのか明確にし、あらかじめ設定したストーリーの軸に沿っていらない部分をそぎ落とします。縦型ショート動画は、極論ではたった2秒で再生数を稼ぐものもありますので、思い切って尺を短くする勇気が必要です。また、より惹きつける演出にするため、冒頭から、音楽のリズムに合わせて動画シーンとテロップをテンポよくはめ込んでいき、さらに白黒から音に合わせて紅葉の色にパッと切り替え目を引く編集も弊社で加えました。 

本事業では弊社が第三者的にアドバイスを行いましたが、事業者様だけで制作を行う場合、おそらく社内にはプライベートで普段からSNSをよく見ている方がいると思います。彼らに配信前の動画を共有してフィードバックをもらったり、また、外国人のスタッフがいればユーザー目線での意見をもらったりすることも参考になると思います。さらに動画内に文字情報を入れる場合、基本的には英語や対象市場の言語で行います。社内の外国人に手伝ってもらう他、最近は生成AIによる翻訳機能が向上しています。たとえば、「この文章を外国の人が興味を持てるようなカジュアルな英語に翻訳して」といった指示を入れると、ほとんど問題のない翻訳が出てきます。地名などの固有名詞は修正が必要な場合もありますが、こうしたツールの利用も助けになるかと思います。ただし、AIは完璧ではないので、アイディアの手助けとして使用いただくことをおすすめします。 

動画事例②から学ぶノウハウ:ストーリー性重視で、行ってみたい!を喚起する 

― 2事例目の動画について、動画制作時のアドバイスと編集のポイントを教えてください。 

白馬村観光局 / Escape the Crowds in Japan 

こちらは、白馬村観光局様が制作した山を登るハイキングの動画です。撮影前、山登りができることをテロップとナレーションのどちらで伝えたらよいかといった相談をいただきました。テロップは、きれいな映像の魅力を損ねてしまう場合があるため、映像の美しさを最大限に活かすならあえて入れない方がよいとお伝えしました。ナレーションについても、視覚情報だけで十分に内容が伝わる場合は無理に使用する必要はありません。特に、映像の構成(ストーリー)によって意図が明確に表現できるのであれば、流行している音源を効果的に使うためにもナレーションは不要と判断しました。 

こうした方針に沿って、最終的な動画では山登りのシーンから始まる構成となりました。事業者が当初制作した動画では、1カット目は山頂から見える絶景で、途中に、人が山を登るシーンが挟まっている構成でした。絶景から始まる動画は確かにインパクトがありますし、提出された映像も高いクオリティでしたが、今回は山を登ってきたら、山頂に絶景が見えるというストーリーが重要です。自分も行ってみたいと共感できる構成になるよう、時系列に沿って映像の順番を整理しました。また、弊社による編集で、制作当時、自然やハイキングを紹介するコンテンツで流行っているトレンド音源に差し替えました。プラットフォームにもよりますが、流行りの音源をフックに流入して、ユーザーがその動画にたどり着く場合もありますので、流行りの音源を積極的に利用することもおすすめします。

最優先すべきは「誰に届けるか」の明確化 

― 縦型ショート動画を配信するSNSアカウントを運用するにあたっては、具体的に何を行えばいいでしょうか。 

まず、ユーザーがフォローしたくなるアカウントを構築するには、誰に向けた配信なのか、明確なターゲット設定が重要です。それに合わせて投稿デザインの統一化を図ります。さまざまな字体やバラバラなフォーマットが使われていると、フォロワーに魅力的なアカウントと映りません。投稿頻度はフィード投稿を週2~3回以上行うのが理想です。これ以下だとユーザーからもプラットフォーム側からもアクティブなアカウントと認識してもらえません。投稿頻度を増やすには、たとえば、長尺な動画を複数回に分けることで投稿回数を増やす方法もあります。また、すでに投稿済みの既存素材を再編集し、流行っている音源に乗せて再投稿するのも一計でしょう。フィード投稿をした翌日にストーリー配信を行うのも、注目度を上げるという意味では有効です。 

ユーザーとのコミュニケーションを図ることも、プラットフォーム側に有利なアカウントと認識してもらうために重要な指標です。DM(ダイレクトメッセージ)への返信はもちろん、コメント欄への返信も基本です。逆にコメントがあまりつかなければ、アンケート機能を使って、ユーザーにどれが興味あるかを問いかけてみるなど、ユーザーとの定期的なコミュニケーションを図ってみましょう。 

また、ある程度の投稿がたまってからになりますが、さらなるフォロワーの増加を目的に、多少の費用をかけてプレゼントキャンペーンや広告配信を行う手法もあります。 

最後がインサイトの分析です。投稿しても投稿後の分析をしない方が実は多いようですが、インサイトを分析することで、どんな種類の投稿がよく見られているのかがわかります。たとえばグルメ系の投稿が人気であればグルメ系の投稿を増やせばユーザーのニーズにマッチしたアカウントに成長していけます。 

 

― 説明していただいたポイントのうち、実行するうえで優先度の高いものはどれですか。 

1点目に挙げた、ターゲットの明確化ですね。新規でアカウントを始める方はもちろんですが、これを把握しないままアカウントの運用を続けている方もいらっしゃいます。この機会に今一度見直して、方向性を確認するとよいでしょう。 

 

― 最後に、これから縦型ショート動画に取り組もうとされる方々へのメッセージをお願いします。 

日々の業務が忙しい中、動画制作と聞くと身構えてしまうと思いますが、縦型ショート動画にはスマートフォンひとつで始められる手軽さがあります。SNSの世界では、高いお金をかけて作り込んだものが必ず多く再生されるというわけでもなく、親近感あふれるカメラワークで撮ったものが突然バズることがおもしろい点でもあります。さまざまな動画を撮って投稿し、トライアンドエラーを繰り返す中で、どのような動画が自分たちのコンテンツに向いているのか時間をかけて見つけ出していただければうれしく思います。 


Tastemade

2012年ロサンゼルスで設立されたライフスタイル動画メディアTastemade, Inc.の日本法人として、2016年に設⽴。 オリジナルコンテンツの制作・配信サービスを行い、自社アカウントのSNSフォロワーは合計1,120万⼈超。 ハイクオリティな映像とこだわり抜かれた世界観を醸し出す動画は⼀般視聴者に加え、企業からも注⽬を集め、動画に関するノウハウなどの提供も行っている。 

 

西原 佳穂 / アカウント・エグゼクティブ 

広告代理店にてメディアバイイングやセールスプロモーション課題に対する広告・販促物の企画業務に従事後、Tastemade Japanに入社。現在は、商品や地域などの認知拡大に向けたTASTEMADEの動画制作・配信やSNSアカウント運用を活用したソリューション提案を担当。 

 

本橋 香那 / ブランド・ストラテジスト&プランナー 

日本とイギリスで7年以上に渡り海外プロモーションに携わり、現在はTASTEMADEを活用したメディアプランニングや海外向けのInstagramアカウント運用を担当。