2024年12月27日
国際会議がもたらす地域への開催効果
日本政府観光局(JNTO)では、訪日インバウンド旅行促進の観点から、国際会議や企業のインセンティブ旅行といったMICEの誘致・開催支援に取り組んでいるところです。 その中でも、国際会議の開催は、開催都市にとって経済波及効果やビジネス機会の創出、開催都市のブランド力向上など、さまざまな効果をもたらします。今回は、国際会議の開催が学術・産業、そして地域にもたらす意義を広く周知するために、BSテレビ東京の特別番組『世界から日本へ 日本を世界へ ~探索!国際会議の現場~』を制作しました。番組でも紹介している国際会議開催地としての日本の位置付けや国際会議がもたらす効果などについて、詳しくご説明します。
国際会議開催地としての日本の位置付け
地方都市でも国際会議を開催できる環境が整備され、大学の研究機関や施設、自治体のサポート体制が充実していることが日本の強みとなっています。ICCA(国際会議協会)の統計によると、2023年に日本で開催された国際会議の件数は世界で7位、アジア太平洋地域では2022年に続き1位でした。アジア太平洋地域の都市別開催件数では、公開されている上位70都市の中に、東京(3位・91件)、京都(10位・41件)を含む日本国内の15都市がランクインしています。このデータからも、日本は欧州に引けを取らない国際会議開催国としての地位を築いていることがわかります。近年、ランクに関わらず地方都市がさらに実績を積み上げており、日本全体の競争力の強化に寄与しています。
国際会議が開催地域にもたらすレガシー効果
国際会議の開催は、交流人口の増加を通じて開催地域の活性化を促し、地域の国際的な知名度や自立的・持続的な発展につながります。また、会議関係者はもちろんのこと、開催地とその住民に対しても多岐にわたる直接的・間接的な効果をもたらします。ここでは、あらためて国際会議が開催地域にもたらすレガシー効果(※1)を整理します。
1.高い経済波及効果
国際会議の開催時には、主催者が支出する会場使用料や通訳の手配といった会議運営費に加え、参加者が支出する宿泊費、飲食費、交通費、ショッピングやエクスカーション(※2)の経費、出展者が支出する出展経費等、幅広い分野で消費が見込まれる他、一か所に滞在する期間も長いことから、一般観光と比較して直接的な経済効果が大きいと言われています。加えて、こうした直接的な経済効果によって生み出される雇用の創出や税収の増加といった間接的な経済効果も大きいと言われています。
2.ビジネス機会とイノベーションの創出
国際会議を開催すると、さまざまな分野の専門家や関連企業が一堂に会し、交流が深まります。こうした交流から新しいビジネス機会や学術分野での新しい共同研究が生まれるなど、開催国・地域における学術や産業の発展に大きな貢献をすることから、イノベーションの創出につながると言われています。そのため、経済効果だけでなく、交流人口の増加など多方面にわたる好影響をもたらします。
3.都市ブランドや競争力の向上
国際会議を誘致・開催することにより、その開催に十分な規模・機能を備えた会議場や、多くの参加者に対応可能なキャパシティと品質を持つ宿泊施設、スムーズな移動を可能にする交通インフラ、無線LANなどのインターネット環境など、安全で快適に滞在できるハード面が整備されていきます。また、受け入れ準備や開催の経験を積むことで、多言語対応可能なスタッフや通訳者の育成、多文化に対応した食事の準備や宗教上の配慮など、ソフト面でのノウハウも蓄積していきます。このようにハード・ソフト両面での国際対応力が向上するため、今後の誘致活動にも寄与します。
近年では、都市の学術的および産業的な強みに合致する会議を誘致しようとする動きも多く、会議の誘致・開催を契機に、その都市の強みの更なる強化につなげるとともに、都市のPRに積極的に活用するケースも見られます。
開催を通じて地域の観光資源や情報が広く発信されることで、地域の国際的な知名度が向上するため、会議終了後の地域活性化も期待されます。
4.長期にわたる社会的効果
国際会議を通じて、世界の先進的な研究者や専門家と市民が交流することで、地元の子どもたちの国際感覚の向上や市民の地元への愛着・誇りの醸成等、経済効果以外にも多様な社会的メリットがもたらされます。近年では、国際会議を開催する各学会・協会なども、国際会議開催時の地域社会へのインパクトを重要視しています。こうした交流は、地域社会に深く結びついた長期的な価値を生み出します。
※1 レガシー効果:一般的には過去の行動や決定が現在および未来に持続的な影響を与える現象を指す。ここでは、会議終了後にもたらされるポジティブな効果のことを意味する。
※2 国際会議のエクスカーション(Excursion):会議の前後に行われる、参加者向けの観光や現地視察ツアーを指す。
国際会議の現場に潜入! BSテレビ東京特別番組『世界から日本へ 日本を世界へ 〜探索!国際会議の現場〜』
JNTOでは、国際会議がもたらすレガシー効果をあらためて知っていただき、ともに国際会議の誘致に取り組んでいただける地域・都市を増やしていくため、BSテレビ東京にて『世界から日本へ 日本を世界へ ~探索!国際会議の現場~』というテレビ番組を制作しました。
2024年9月29日(日)に放送されたこの番組では、ナビゲーターが実際に国際会議の現場を訪れ、招致委員会のメンバーと対談。招致の経緯や、国際会議が日本の学術、産業、行政にもたらすメリットなどについて掘り下げた議論を展開しました。市民向けプログラムの様子や、会議に参加する国内の研究者や学生へのインタビューも盛り込み、国際会議を開催する意義を伝えています。
また、地方都市において国際会議誘致に健闘している都市のひとつとして香川県・高松市を取り上げ、同市で開催された「第18回アジア太平洋ギフテッド教育研究大会」の様子と、市や高松観光コンベンション・ビューローの取り組みを紹介しています。
この大会は、2024年8月17日〜20日の4日間、香川大学で開催され、世界の26ヵ国・地域から総勢420人の研究者や教育者、ギフテッド(※3)の学生たちが集まりました。大会実行委員長である愛媛大学の隅田学教授は、「海外で開催する場合、日本から100人が参加することは難しいが、日本での開催なら100人が参加できる。国内開催で多くの人が集まれることが意義深い」と強調しました。
さらに、国際会議の開催地として選ばれるためには、会議中に実施される視察やレクリエーションも重要な要素となります。今回の会議では、小豆島での地引き網体験や香川名物のうどん作り、地元のスーパーサイエンスハイスクールの視察などが行われ、その土地ならではの文化や自然且つギフテッド会議の内容に即したプログラムが企画されました。番組では、体験した参加者の生の声や、地元の商店街とのタイアップを模索するビューロー職員の様子などに触れながら、地域特有のコンテンツの掘り起こしの重要性を紹介しています。
※3 ギフテッド:周囲と較べて何かに秀でた能力を示す人のこと。記憶力や言語能力、創造性、リーダーシップ、特定の学問に優れる人などを指す。
会議参加者による小豆島での地引き網体験とうどん作り体験の様子
また、2024年8月25日〜30日に京都で開催された「第27回国際昆虫学会議」では、市民向け講座や大会ロゴの一般公募など、さまざまな形で国際会議に市民の参加を促す仕掛けなども紹介しています。海外の著名な研究者と開催地の住民や子どもたちが直接触れ合えるのも、国際会議の醍醐味です。
番組では、今回の誘致成功のポイントとして、誘致活動でアピールした点やオールジャパンでの取り組みなども取り上げながら、国際会議の開催が学術・産業・地域にもたらす意義に触れています。
市民プログラム「Let's Observe Insects with Global Entomologists!」の様子
番組のアーカイブ映像は、下記より視聴できます。ぜひご覧ください。
番組のアーカイブ映像
国際会議の誘致に向けて
国際会議の誘致というと、大規模な国際会議を連想されるかもしれませんが、実際には参加者が500人以下の国際会議が全体の8割を占めており、日本の地方都市においても開催可能な会議が数多くあります。
国際会議開催地決定の決め手にはさまざまなパターンがあり、そのプロセスも多種多様です。一方で、昨今ではどの分野の国際会議においても、市民や地域を巻き込み、学問や開催地の持続可能な発展に向けて開催のレガシーを残す取り組みが重要視されています。
このような背景を踏まえ、「日本で開催したい」、「日本での開催が最適」という思いを強く発信することが大切です。
さらに、地元の大学などと継続した関係を築き、地域の特色を活かした観光資源の活用や、会議の内容に即したエクスカーションの企画を行うことも重要です。
JNTOのMICEサイトでは、国際会議のケーススタディーを紹介していますので、ぜひご参考になさってください。
国際会議の開催事例:https://mice.jnto.go.jp/organizer-support/case-study/
国際会議の日本開催は、開催地や国、関連企業にとって共通の目標です。産官学が一体となった「Team Japan」として誘致活動に取り組み、開催を成功させるため、引き続き地域の皆様とも連携しながら誘致活動を進めていきたいと考えています。
JNTOでは、具体的な国際会議の誘致・開催に関する相談を承っています。ぜひお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ先 JNTO MICEプロモーション部
TEL:03-5369-6015 E-mail:convention@jnto.go.jp
各種参考リンク