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​​訪日需要を地域の成果へ、訪日インバウンド入門講座 最新動向と実践のヒント​

​​訪日需要を地域の成果へ、訪日インバウンド入門講座 最新動向と実践のヒント​

​​訪日需要を地域の成果へ、訪日インバウンド入門講座 最新動向と実践のヒント​

​​訪日インバウンド市場が高水準で推移する中、「情報発信をしているのに予約につながらない」「地域に来てもらう理由をどう作ればよいのか」と悩む観光関係者も少なくありません。​ ​​日本政府観光局(JNTO)が開催した「訪日旅行の初歩を学ぶ!インバウンドの入門セミナー~最新動向と地域事例~」では、やまとごころ代表取締役の村山慶輔氏が登壇し、最新動向を踏まえながら、旅行者理解、商品造成、情報発信、受け入れ環境整備まで、地域が成果につなげるための考え方を解説しました。​ ​​本記事では、セミナーで紹介された最新動向や市場理解のポイント、地域で実践したい具体的なステップについて、その要点を​ご​紹介します。​

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  株式会社やまとごころ 代表取締役/インバウンド戦略アドバイザー

  村山慶輔(むらやまけいすけ)

神戸市出身。米国ウィスコンシン大学マディソン校卒業後、アクセンチュアを経て、2007年にインバウンド観光情報サイト「やまとごころ.jp」を立ち上げる。以来、観光事業者・自治体・DMO等に向けて、情報発信、人材育成、研修、コンサルティングを通じ、インバウンド戦略の立案・実行を支援。観光庁をはじめ、国や地域の観光政策・事業に関する委員・アドバイザー等を務め、持続可能な観光地域づくりにも取り組む。著書に『観光再生』など計10冊。やまとごころ.jpでは、観光・インバウンドの現場視点を綴る連載「観光フィールドノート」を執筆中。

2026年訪日インバウンド最新動向、伸びる市場の中で地域に求められる視点​ 

​​2025年の訪日外国人旅行者数は4,268万人に達し、2024年2月から2025年12月まで23ヵ月連続でその月としての過去最高値を更新しました。2026年1月は旧正月時期のずれなどで前年同月を下回ったものの、2月、3月は再びその月としての過去最高値を更新しています。消費額も高水準で、2026年1〜3月の訪日外国人旅行消費額は2兆3,378億円となり、前年同期比2.5%増となりました。​ 

​​一方で、日本全体の伸びと、​​自地域​​や事業者の成果は別物です。全体の数字を見るだけでなく、どの市場が伸び、誰がどこへ動き、地域でどのような消費につながっているのかを分解して捉える視点が求められます。​ 

​​また、今後インバウンドをさらに伸ばしていくうえで鍵となるのが地方誘客です。地方部の延べ宿泊者数は増加傾向にあるものの、地方宿泊比率はおおむね30%前後で推移しています。地方誘客を進めるには、「来てもらう理由」と「行ける仕組み」の両方が欠かせません。旅行者目線でその地域を選ぶ理由を作り、移動や滞在、地域内の動線まで含めて設計することが重要です。​ 


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出典:株式会社やまとごころ

​​旅行者に地方を選んでもらう理由を作るうえで、2026年に押さえたいキーワードとして、高付加価値旅行、アドベンチャートラベル(AT)、ガストロノミー​ツーリズム​などのテーマが挙げられます。旅行者にとって「なぜその地域に行くべきなのか」を明確にし、体験やストーリーとして編集していく視点が求められています。​ 

​​加えて、持続可能な観光を実現するためには、オーバーツーリズム対応、災害対応、住民生活との両立も欠かせません。​ 

​​観光庁が2026年3月に策定した第5次観光立国推進基本計画でも、持続可能性、地域消費の拡大、地方誘客、交通連携などが重点テーマとして掲げられています。インバウンドに取り組む地域や事業者にとって、押さえておきたいキーワードです。​ 


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出典:株式会社やまとごころ

市場別理解と関心テーマを掛け合わせ、地域の強みを磨き上げる​ 

​​訪日外国人旅行者は、ひとくくりにはできません。市場、属性、同行者、関心テーマによって、旅行スタイルや情報収集、消費傾向は大きく異なります。​ 

​​例えば、アジア近距離市場では、週末や短期滞在で繰り返し訪日する旅行者が多く、話題のスポットや未訪問地域への関心も高い傾向があります。一方、欧米豪市場では長期滞在が多く、文化、自然、地域の人との交流、職人や生産者との接点が重視されています。​ 

​​そのため、市場別の理解に加えて、旅行者が何に価値を感じるのかという関心テーマの視点を重ねることが重要です。自然に強みを持つ地域であればアドベンチャートラベル、食を売りにする地域であればガストロノミー​ツーリズム​、受け継がれた歴史文化が根づく地域であればガイド付き体験や街歩きが勝ち筋になり得ます。​ 


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出典:株式会社やまとごころ

​​JNTOが2026年4月に発表した「訪日マーケティング戦略(2026年度〜2030年度)」でも、市場別戦略に加え、市場横断で旅行者の関心テーマを捉えるアプローチが重視されています。中でも、高付加価値旅行や特定テーマ旅行(アドベンチャートラベル、ガストロノミー​ツーリズム​)が重要テーマとして位置づけられており、市場とテーマを掛け合わせながら、自地域との接点を見極める視点が求められます。​ 

​​ここでいう高付加価値は、単に高級な宿泊施設があることを指すものではありません。作り手に会えること、通常入れない場所に入れること、地域の背景をガイドが伝えること、移動や食事にストレスがないこと、旅行による消費が地域の事業者や地域経済に還元されること。こうした要素が重なって初めて、旅行者にとって価値ある体験になります。​ 


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出典:株式会社やまとごころ

成果につなげる実践ステップ、「知られる・予約できる・行ける」を整える​ 

​​インバウンドを地域の集客や消費、宿泊といった成果につなげるには、個別施策ではなく、旅行者に知ってもらい、予約され、実際に訪れてもらうまでの導線全体を設計することが重要です。​ 

​​今回のセミナーでは、実践の流れとして、1.戦略立案、2.商品造成、3.情報発信・販売、4.受け入れ環境整備、5.地域連携の5つのステップを紹介しました。​ 


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出典:株式会社やまとごころ

​​まず戦略立案では、現状どのような旅行者が来ているのかを把握したうえで、「なぜインバウンドに取り組むのか」という目的と、「誰に届けるのか」というターゲットを明確にします。市場規模だけで判断するのではなく、自地域の強みや受け入れ体制との相性を踏まえて考えることが重要です。​ 

​​次の商品造成では、日本人にとって当たり前の日常や地域資源を、旅行者目線で体験価値として再編集していきます。訪日外国人旅行者の声や口コミ、OTAの売れ筋なども参考にしながら、宿泊や体験商品として形にしていきます。​ 

​​情報発信・販売では、作った商品を知ってもらい、予約できる状態まで整えることが求められます。自社サイトやOTA、旅行会社など販路を設計し、予約導線まで含めて考える必要があります。​ 

​​受け入れ環境整備では、多言語対応、決済、食の多様性、災害対応、2次交通など、安心して滞在できる環境づくりが欠かせません。特に、空港や駅から地域までの移動、いわゆる「行ける仕組み」は地方誘客の重要な要素になります。​ 

​​最後の地域連携では、地域内で役割分担しながら、広域・テーマ・動線でつないでいく視点が重要です。発信から予約、受け入れ、再訪までを地域全体で支える仕組みづくりが求められます。​ 

​​そのうえで、旅行者に選ばれる状態とは、「知られる」「予約できる」「行ける」の3つが揃っていることです。さらに、選ばれ続けるためには、住民生活や災害対応、混雑対策など、持続可能な受け入れ環境まで含めて設計していく必要があります。​ 


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出典:株式会社やまとごころ

事例から読み解く、地域で選ばれる仕組みづくり​ 

​​最後に、実際に成果につなげている地域事例を紹介します。事例を見る際に重要なのは、取り組みをそのまま真似ることではありません。成果の背景にある考え方や仕組みを理解し、自地域に置き換えて考えることです。​ 

​​今回は、セミナーで紹介された事例の中から、地域で取り組む際のヒントになりやすい3つの事例を取り上げます。それぞれ、滞在価値の創出、高付加価値化、持続可能な受け入れという観点から見ていきましょう。​ 

​​まず、和歌山県の高野山では、精進料理、朝のお勤め、奥之院ナイトツアーなどを組み合わせ、滞在型の体験価値を生み出しています。ポイントは、地域資源そのものではなく、「宿泊して初めて体験できる時間」を設計している点です。夜や朝の過ごし方まで含めて設計することで、宿泊や地域消費につなげています。​​自地域​​でも、通過型になっている資源に対して、泊まる理由や体験する理由を加えられないかという視点が参考になります。​ 

​​続いて、石川県金沢市の株式会社こはくは、古民家をリノベーションし、体験の拠点として活用しています。地元職人によるものづくり体験や芸者体験などを通じて、地域文化そのものを価値として届けています。地域への還元や文化継承まで含めた設計が、欧米富裕層からの支持につながっています。重要なのは、高価格帯の商品を作ることではなく、「誰に、どんな価値を届けるか」を明確にしている点です。自地域でも、地域資源の背景にある人や技術、思想まで含めて体験として編集できないかを考えることが、高付加価値化のヒントになります。​ 

​​また、岐阜県の白川郷では、多くの観光客を受け入れる一方で、私有地への立ち入り防止やマナー啓発、事前案内などを通じて、住民生活との両立を図っています。これからのインバウンドでは、「来てほしい」だけでは十分ではありません。地域に無理なく受け入れ続けられる状態をどう作るかも重要なテーマです。誘客だけでなく、移動、案内、地域を守るルールまで含めて設計できているか。この視点は、多くの地域に共通する課題といえます。​ 


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出典:株式会社やまとごころ

事例から学ぶべきなのは、施策そのものではなく、地域資源をどう価値に変え、どう持続可能な仕組みにしているかという構造です。成果の背景にある考え方を理解し、自地域ならどう実践できるかを考えることが、成果につながる第一歩になります。 

今回のセミナーでは、インバウンドの最新動向から市場理解、地域で成果につなげるための実践ステップまで、多角的に紹介しました。重要なのは、訪日需要の拡大を追い風として捉えるだけでなく、自地域に合った旅行者像を定め、「知られる・予約できる・行ける」状態を設計することです。 

インバウンドは一過性ではなく、中長期で向き合う市場です。持続可能な受け入れも意識しながら、まずはできることから一歩踏み出し、地域ならではの価値づくりにつなげていくことが期待されます。本セミナーが今後の取り組みの一助となれば幸いです。 


質疑応答一例

視聴者の皆様から多かったご質問を抜粋し、お答えします。

Q 体験商品やツアー造成が「作って終わり」にならないためには、何が必要ですか?​

A 重要なのは、商品造成そのものを目的にせず、販売と成果まで見据えて設計する視点です。商品が実際に売れることで地域にお金が落ち、事業者の継続的な活動や地域の持続可能性につながります。​ 

​​そのためには、まず市場ニーズがあるかを把握し、そのうえで商品を造成し、知ってもらい、予約してもらい、受け入れるまでの一連の流れを整える必要があります。造成に関わる事業者には、商品づくりだけでなく、販売までを含めて設計する視点が求められます。​


Q 日本ならではの伝統や自然体験などを好むような高付加価値層も、OTAで予約する傾向がありますか?​ 

A 高付加価値商品であっても、OTAを通じて販売され、高い満足度につながっているケースはあります。​ 

​​一方で、個別の要望に応じたカスタマイズや、移動手配、ガイド手配などを伴う場合は、海外旅行会社や日本側のDMC、ランドオペレーターを通じて販売されるケースも多く見られます。そのため、OTAか旅行会社かの二択で考えるのではなく、それぞれの特性を踏まえながら、複数のチャネルを活用する視点が重要です。


 中国人の渡航自粛や中東情勢により、インバウンドの動向や消費に変化はありますか​?

 中国市場については、統計上でも伸び悩みが見られ、現場でも特に買い物を中心とした消費の減少を感じる事業者が増えているといいます。特定市場や団体旅行への依存度が高い事業者ほど、影響を受けやすい状況も見られています。一方で、欧米豪市場の伸びに支えられ、宿泊施設や商業施設では好調を維持しているケースもあります。​ 

​​また、中東情勢については、海外旅行先の選択肢が変化する中で、日本が安心・安全な渡航先として選ばれる動きがあるという声も海外の旅行会社から聞かれています。​ 

​​ただし、影響は直接的というよりも間接的な側面が大きく、燃料価格の上昇や航空サーチャージの高騰によって、国際移動コストが増加しています。特にLCC(格安航空会社)を利用する旅行者にとっては価格上昇の影響が大きく、訪日需要に一定の影響を及ぼす可能性があります。​ 



参考サイト

<JNTO>

​​◆宿泊旅行統計調査(毎月月末に更新)​ 

​​日本人及び外国人の宿泊旅行の実態等を把握する調査​ 

https://www.mlit.go.jp/kankocho/tokei_hakusyo/shukuhakutokei.html

 

​​◆インバウンド消費動向調査(旧・訪日外国人消費動向調査)(四半期に1回更新)​ 

​​訪日外国人旅行客の消費実態等を把握調査​ 

​​旅行消費額、旅行者属性、その他満足度などを計測​ 

https://www.mlit.go.jp/kankocho/tokei_hakusyo/gaikokujinshohidoko.html 

 

​​◆観光立国推進基本計画​ 

​​観光立国推進基本法の規定に基づいた、観光立国の実現に関する基本的な計画​ 

https://www.mlit.go.jp/kankocho/seisaku_seido/kihonkeikaku.html