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地域で成果を出すための訪日インバウンド入門講座、5つの最新トレンドと5つの実践ステップ

地域で成果を出すための訪日インバウンド入門講座、5つの最新トレンドと5つの実践ステップ

地域で成果を出すための訪日インバウンド入門講座、5つの最新トレンドと5つの実践ステップ

訪日インバウンドへの関心が高まる中、「なにから始めればいいのか分からない」「基礎から学び直したい」と感じている観光関係者の方も多いのではないでしょうか。そうしたニーズに応えるべく開催されたのが、日本政府観光局(JNTO)による「訪日旅行の初歩を学ぶ!インバウンドの入門セミナー~最新動向と地域事例~」です。急成長する市場をどう捉え、地域としてどのように取り組んでいくべきか。やまとごころ代表の村山慶輔氏による講演では、最新の市場動向から実践的なステップまでが網羅的に紹介されました。本記事では、そのセミナーの要点をまとめ、インバウンド推進のヒントとなる視点をお届けします。

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  株式会社やまとごころ 代表取締役/インバウンド戦略アドバイザー

  村山慶輔(むらやまけいすけ)

兵庫県神戸市出身。米国ウィスコンシン大学マディソン校卒。 2000年アクセンチュア(戦略グループ)入社。 2006年退社後、2007年にインバウンド観光に特化した BtoBサイト「やまとごころ.jp」を立ち上げ、観光事業者・自治体向けに情報発信、教育・研修、コンサルティングサービスなどを提供。内閣府観光戦略実行推進有識者会議メンバー、観光庁最先端観光コンテンツインキュベーター事業委員をはじめ、国や地域の観光政策に携わる。国内外のメディアへ出演多数。
近著に「観光再生 サステナブルな地域をつくる28のキーワード(プレジデント社)」「小さな会社のインバウンド売上倍増計画(日本経済新聞社)」がある。

成長続く訪日インバウンド市場、世界の潮流と今後の可能性を探る

2025年現在、インバウンド市場は、さらなる成長フェーズにあります。観光庁は訪日外国人の消費額が2030年には、現在(2024年)の約8兆円から15兆円規模に拡大すると見込んでいます。これは自動車輸出産業に匹敵する巨大市場です。

背景には、世界の旅行市場の拡大があります。国際旅行者数は2024年に14億人、2030年には18億人に達する見通しです。特にアジア諸国の若年層がその中心を担うと見込まれています。平均年齢で見ても、日本の48.6歳に対し、インドは28.2歳、フィリピンやインドネシアも30歳前後と、訪日意欲の高い若年層が豊富な国が多いのが特徴です。

加えて、円安が追い風となり、訪日旅行は手頃で魅力的に映っています。初訪日の旅行者が増加し、2024年の訪日外国人旅行者の一人あたり滞在中消費額も22.7万円と高水準で、地域経済への波及効果が期待されています。

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出典:株式会社やまとごころ

実際に、外国人観光客の地方への関心も高まっています。JNTOが2023年1~3月に、世界22市場のレジャー目的での海外旅行経験者を対象に実施した調査では、台湾・韓国・東南アジアからの旅行者の約9割が「地方に行きたい」と回答し、欧米豪でも5割~7割の割合で地方訪問意向が示されています。
ニューヨーク・タイムズ紙の「行くべき52カ所」には、2023年の盛岡市をはじめ、2024年の山口市、2025年の富山市と、地方都市が3年連続で選ばれており、地方への関心の高まりがうかがえます。

インバウンドは、都市だけでなく地方の経済や雇用を支える鍵となる存在です。今後、こうした世界的な需要の変化を的確に捉え、地域が自らの強みを生かして受け入れ環境を整えていくことが、地方誘客成功の第一歩となるでしょう。

訪日旅行の今を読み解く|訪日インバウンド5大トレンドとは

インバウンド市場を深く理解するためには、訪日外国人旅行者の「変化するニーズ」に目を向けることが大切です。セミナーでは、今押さえておくべき5つのトレンドを紹介しました。以下、それぞれのポイントをくわしく見ていきます。

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出典:株式会社やまとごころ

1つ目は、「モノからコトへ」という変化です。以前は買い物を目的とする訪日外国人旅行者が多かったものの、近年は着物での街歩きや、和菓子づくりなど、日本ならではの体験を求める傾向が強まっています。現在、訪日外国人旅行者の消費に占める娯楽サービスの割合は5.1%にとどまっています。これに対し、欧米諸国における外国人旅行者の消費では、娯楽サービスが全体の10%以上を占めており、日本における市場拡大の可能性が示唆されます。

中でも注目されているのが「アドベンチャートラベル(AT)」です。身体的なアクティビティ(たとえばハイキングやトレッキング)に、自然や異文化体験を組み合わせた旅行スタイルで、体力に応じたソフトな内容でも成り立ちます。自然や伝統文化が息づく地域との親和性が高く、比較的取り組みやすいテーマです。

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出典:株式会社やまとごころ

2つ目は、「滞在型」へのシフトです。短期の観光旅行から、より長く地域に滞在するスタイルへと変化しています。その一例として、「デジタルノマド」など、仕事と観光を組み合わせた新たな滞在の形も注目され始めています。2024年7月からは、一定の条件を満たした海外のフリーランスやリモートワーカーに向けた「ノマドビザ」も始まり、最大6ヵ月の滞在が可能となりました。

3つ目は、「地域とのふれあい」です。観光地をめぐるだけでなく、地域の人々と交流し、文化や暮らしを体感する旅が求められています。特に欧米の旅行者にこの傾向が強く、旅行会社からも「旅程に地域の人との交流を組み込んでほしい」といった要望が増えています。職人との対話や農業体験など、「人と会う旅」の価値が高まっています。

4つ目は、「サステナビリティ」です。持続可能な観光は世界的な潮流であり、観光庁やJNTOも重点的に取り組んでいます。2025年1月に実施されたBooking.comの調査(世界34ヵ国・地域の旅行者3万2,000名を対象)によると、旅行者の93%が「旅行においてよりサステイナブルな選択をしたい」と回答しました。環境に加え、経済や地域社会とのバランスも重視されており、地域がこうしたニーズにどう応えるかが今後の課題です。

広島の一般社団法人My Japanが展開する「Asageshiki」ツアーは、朝7時半から地域の山に登り自然を楽しむ体験型観光で、前泊が必要なことから宿泊日数の増加にも寄与。地域経済にも貢献する好事例として注目されています。

5つ目は、「食の多様性」です。訪日外国人旅行者の半数以上が宗教・健康・アレルギーなどによる食の制限を抱えていて、特に欧米や中東からの旅行者にはベジタリアン、ビーガン、ハラール対応が求められます。対応策として、写真や番号、多言語表記、アイコンなどで対応料理が一目でわかるメニューづくりは、地域の飲食店でもすぐに実践できる工夫です。

こうした5つのトレンドを踏まえることで、訪日外国人旅行者の多様なニーズに応えた観光コンテンツの整備が可能です。地域の強みを活かしながら、時代に合った受け入れ体制を整えていくことが、これからの観光地域づくりの大きなヒントになるでしょう。

訪日インバウンド実践の基本と地域での進め方 

インバウンドに取り組む際に、まず確認しておきたいのが「なぜ取り組むのか」という目的です。目的が明確であれば、状況が変化しても柔軟に対応しながら継続できます。たとえば、インバウンドの目的として「成長市場への参入」「高単価商品の販売」「平日需要の獲得」などが代表的です。特に、平日旅行が多い外国人は週末集中型の日本人と異なり、地域の安定的な集客に貢献します。

一方、自然災害や国際情勢、特定市場への依存、文化・言語の壁といったリスクもあります。だからこそ、「何のために取り組むのか」という軸を明文化し、常に立ち返れるようにしておくことが重要です。

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出典:株式会社やまとごころ

その上で、実際にインバウンドに取り組む際は、次のような5つのステップで進めていくと効果的です。

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出典:株式会社やまとごころ

最初のステップは、戦略立案です。「3年後に○○の国から年間○○人を呼びたい」「年間消費額を○億円にしたい」など、具体的で定量的な目標を設定します。そのうえで3C分析、すなわち「顧客が誰で、なにを求めているか」「自地域の強みはなにか」「競合はなにをしているか」を整理することで、実現可能な戦略を立てていきます。     

次に、商品造成です。訪日外国人旅行者のニーズに応じた体験型観光コンテンツを企画・設計する段階で、青森では「手ぶらで楽しめるお花見体験」が桜の時期に商品化されました。郷土料理や文化体験、忍者による演出を組み合わせたユニークな内容で、4.4万円という高価格ながら10日で200名以上を集客。花見に地域の食や人との接点を加えることで、旅行者に特別な体験を提供し、地域経済にも貢献しています。

このように、「体験」を核とした商品造成は、単なる観光資源を持続可能な収益モデルに転換するための重要なステップです。体験の質を高める工夫次第で、地方でも高付加価値なインバウンド観光を展開できる可能性が広がります。

3番目は、プロモーションです。どれほど優れた商品でも、知られなければ存在しないのと同じです。旅行会社やランドオペレーター、OTA(ネット予約サイト)、自社SNS、観光案内所との連携など、訪日外国人旅行者に情報を届ける手段は多様で、地域の強みに合った手法で効果的に発信することが重要です。実際に、佐賀県ではロケツーリズムを活用し、タイ映画の誘致をきっかけに観光客が15倍に増加した例もあります。

4番目は、受け入れ準備です。インフラや情報発信の整備だけでなく、訪日外国人旅行者との認識の違いを理解する視点が求められます。たとえば「当たり前」と思っていた案内や表示が、外国人にはまったく伝わらないこともあります。滞在を快適にするには、宿泊施設や交通、Wi‑Fi、決済手段、多言語対応、災害時の医療体制などを整備する必要があります。

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出典:株式会社やまとごころ

最後は、地域連携です。インバウンド事業は広域で連携することで費用対効果が高まり、持続可能な形になります。     地域の魅力を点で終わらせず、DMOや事業者、住民が一体となって連携することで、地域の魅力を商品化・継続的に磨いていくことが重要です。共通のビジョンを持ち、互いの強みを掛け合わせる体制づくりが、地域全体の成長につながります。

このように、目的の明確化から5つのステップを意識することで、インバウンド初心者でも取り組みの道筋が見えてきます。焦らず着実に、自地域のペースで取り組んでいくことが成功への第一歩です。

今回のセミナーでは、インバウンドの最新動向から地域での具体的な取り組み方まで、多角的に紹介しました。インバウンドは今後も成長が期待される分野であり、まずは「なぜ取り組むのか」という目的を明確にすることが重要です。持続可能性を意識しつつ、地域に合った方法で一歩を踏み出し、中長期的に取り組むことで、新たな可能性が広がります。本セミナーが今後の取り組みの一助となれば幸いです。


質疑応答一例

視聴者の皆様から多かったご質問を抜粋し、お答えします。

Q ゴールデンルートから外れた地域に観光客を呼ぶ際、交通手段はどう考えればよいですか?

A 交通について考える際は、大きく2つの段階に分けて整理するとよいでしょう。まずは最寄りの新幹線駅や空港までのアクセス、次にその駅や空港から目的地となる観光スポットまでの移動手段です。ターゲットによって好まれる手段は異なり、富裕層や高齢者にはタクシーやハイヤー、欧米の個人旅行者(FIT)には電車や路線バスが好まれる傾向があります。レンタカーの需要も増えており、複数の選択肢を用意することが大切です。
また、旅行商品に交通を組み込む方法も有効で、ターゲットに応じた設計で利便性を高めることが求められます。


Q 地域の住民にインバウンド受け入れを前向きに捉えてもらうにはどうすればよいですか? 

A 観光のメリットを地域の方々に実感してもらうことが第一歩です。観光客による消費が施設整備や雇用につながるなど、目に見える効果を共有することで、地域の理解や関心も高まっていきます。
さらに、インバウンドには経済効果にとどまらない価値があります。外国人に地域の魅力を褒められたことをきっかけに、自分たちのまちに誇りを持つようになったという声も聞かれます。新たな視点との出会いが、地域の魅力を再認識する契機になることもあるでしょう。

こうした成功体験や評価を地域内で共有し、交流の場を設けることで、自然と前向きな空気が生まれます。その積み重ねが、地域全体の理解と協力を育てる土台となるはずです。


 インバウンド誘客において、旅行会社が自治体に期待することはどのようなことですか?

 旅行会社は、魅力ある観光商品を仕入れることを目的に地域を訪れます。その際に、自治体に期待されるのは、地域の有望な事業者と旅行会社を結びつける「コーディネーター」としての役割です。
新たな事業者との出会いを求める声は多く、地域のおもしろい取り組みや可能性のある商品を発掘・紹介する存在が求められています。こうした橋渡しを通じて信頼関係が生まれ、地域への関心や誘客の機会が広がります。


参考サイト

<JNTO>

◆訪日外客統計(毎月第3水曜更新)

前月の訪日外客数の合計、国・地域別の人数を発表。

https://www.jnto.go.jp/statistics/data/visitors-statistics/

<観光庁>

◆宿泊旅行統計調査(毎月月末に更新)

日本人及び外国人の宿泊旅行の実態等を把握する調査

https://www.mlit.go.jp/kankocho/tokei_hakusyo/shukuhakutokei.html


◆インバウンド消費動向調査(旧・訪日外国人消費動向調査)(四半期に1回更新)

訪日外国人旅行客の消費実態等を把握調査

旅行消費額、旅行者属性、その他満足度などを計測

https://www.mlit.go.jp/kankocho/tokei_hakusyo/gaikokujinshohidoko.html