2024年10月4日
JNTO海外事務所職員が地域でコンテンツを視察&フィードバック

日本政府観光局(JNTO)では、海外事務所職員が地方の観光資源を視察・体験し、観光コンテンツの磨き上げに関するアドバイスなどを行う事業を実施しています。今回は、6月29日から7月1日の日程で、ローマ事務所とロンドン事務所に勤務する現地職員が中国地方を視察。視察最終日には、広島でインバウンド研修会を開催し、視察内容のフィードバックを含む講演を行いましたので、その様子をご報告します。
全国10地域をJNTO海外事務所職員が視察、地元推薦コンテンツについてフィードバック
訪日外国人旅行者数がコロナ後に大きく回復している中、地方誘客を促進するため、地域連携部地域プロモーション連携室の初めての取り組みとして、JNTOの海外事務所職員が日本各地の観光資源を視察・体験し、地域の観光コンテンツの磨き上げに関するアドバイスなどを行う事業を実施しました。これまでにも、地域のDMOや自治体の方々と連携して魅力ある観光コンテンツを数多く収集し、体験型コンテンツ集の「Experiences in Japan」や、地域のおすすめコンテンツ集「Japan's Local Treasures」として海外に向けた情報発信に力を入れてきました。本事業では、海外市場の最前線で訪日旅行のトレンドに接している海外事務所の職員の目線で、地域の観光コンテンツの磨き上げをサポートすることにより、さらなる地方誘客を後押ししていくことを目指しています。
(左)Experiences in Japan | Travel Japan(Japan National Tourism Organization) /(右)Japan's Local Treasures | Travel Japan (JNTO)
実施にあたっては、北海道・東北・関東・北陸信越・中部・近畿・中国・四国・九州・沖縄の10地域を5コースにわけて、計10名のJNTO海外事務所職員が分担して視察しました。
本ページでは、ローマ事務所の庄田とロンドン事務所の石井が、6月29日から7月1日の日程で山陰エリアを視察した内容と、7月1日に実施したインバウンド研修会の内容をご紹介します。
海外事務所職員による地域観光コンテンツの磨き上げサポート5コース
自然・アート・文化、山陰の魅力を視察
(1日目)
海外事務所の職員2名は、最初に鳥取砂丘と砂の美術館を訪問しました。砂丘に隣接するビジターセンターで砂丘に関する様々な展示を見学後、展示で見た植物や動物の足跡なども楽しみながら砂丘の馬の背まで登り、ユニークな景色を堪能しました。その後、砂丘でのリフト体験を経て砂の美術館を訪問しました。
■鳥取砂丘と砂の美術館への海外事務所職員のコメント
- 1ヵ所にアートと砂丘と海があり、さらにアクティビティも楽しめるので、アウトドアが好きな層やファミリー層に薦めたい。
- ビジターセンターで砂丘について学ぶことができ、砂の美術館から外に出た時に砂丘が見え、その場にある自然の素材でアートを作っているのを実感できる。近くに新しくホテルが開業予定である点も魅力。
- 施設の営業時間を延ばせば、夕日とセットで楽しめるスポットとしても訴求できるのではないか。
砂の美術館にて
(2日目)
翌日は、江戸時代に参勤交代の宿場町だった智頭宿に残る国の重要文化財の石谷家住宅を訪問しました。3,000坪の敷地面積に、建築面積641坪で建てられた住宅は、めったに採取できない美しい真っ直ぐな木目の柱や芸術的な細工が施された欄間、来客時に使用人を呼ぶ際に使われた押しボタンなど、山林経営で栄えていた家らしい銘木や職人の技が随所にちりばめられていました。
重要文化財石谷家住宅への海外事務所現地のコメント
- 歴史的建築物はもちろん、山間の昔ながらの家が街道沿いに並ぶ、自然と融合する街並みそのものが魅力的。
- 併設のカフェで食事をしながら国の登録記念物の庭園を楽しめるのが良い。蔵でその時々の芸術家や職人の展示がなされているのも魅力。
石谷家住宅にて
最後の視察先、出雲では、旧暦10月10日に全国の八百万 の神々をお迎えする稲佐の浜から始め、出雲大社をお参りしました。
稲佐の浜、上宮、出雲大社への海外事務所職員コメント
- 稲佐の浜は岩の上に鳥居があって自然と歴史が融合しており、歴史・文化が好きな人に合う。神話・歴史を知らないと出雲の本来の良さを理解できない面もあるので、説明が書かれたウェブサイトに飛ぶ二次元コードが随所に設置されているのはとても良い。神話・歴史を知らない人も親しめるシンプルな案内ができるガイドの充実がキーになると思う。
- 稲佐の浜で拾った砂を出雲大社で清められた砂と交換してお守りにする体験は神秘的で印象的だった。
出雲大社にて
その他、全体を通してのフィードバックを、ご紹介させていただきます。
コース全体への海外事務所職員のコメント
- 観光スポットは、点ではなく面で紹介するとなお良い。そこに行けばそのコンテンツとセットで他にも楽しめるものがあること、そして、ゴールデンルート上にある大都市から、公共交通機関でどのくらいの時間がかかるのかというアクセス情報が一緒に掲載されることで旅程に組み込んでもらいやすくなる。
- 日本人向けの内容とは異なる、外国人向けのガイディングができるガイドがいると良い。
インバウンド研修会では関心の高いサステナブル・ツーリズムをテーマに講演
海外事務所職員によるコンテンツ視察後は、中国運輸局管内の自治体、DMO、観光関連事業者を対象にインバウンド研修会を開催し、計47名にご参加いただきました。
■実施概要
- 日時:2024年7月1日(月) 14:00~17:15
- 場所:リファレンス広島小町ビル komaB02会議室
- プログラム
<第一部>講演
14:00〜14:05 連絡事項・注意事項
14:05〜14:10 開会挨拶
14:10〜15:30 サステナブル・ツーリズムに関する講演【JNTO本部】
JNTO海外事務所職員による講演【JNTOローマ事務所及びロンドン事務所】
15:30〜15:45 地域講演【せとうち観光推進機構】
15:45〜15:55 全体質疑応答
15:55〜16:00 閉会挨拶
<第二部>コンサルティング・ネットワーキング
16:10〜16:15 挨拶【山陰インバウンド機構】
16:15〜17:15 ネットワーキング※同時にJNTO本部職員による個別コンサルティングを実施
第一部では、地方運輸局、広域連携DMOへの事前ヒアリングに基づき決定したテーマ「サステナブル・ツーリズム*(以下、ST)」について、市場横断プロモーション部の田中シニアアシスタントマネージャーが講演を行いました。
講演では、JNTOが目指す「地域の環境を守る・育む」「地域の文化を守る・育む」「地域の経済を守る・育む」ことを柱にした、旅行者、事業者、受け入れ地域の三方よしのSTについてや、サステナブルな取り組みを積極的に実施し、国際認証/アワードを取得している地域の観光魅力を紹介する特集記事制作等についてご説明しました。
*持続可能な観光(サステナブル・ツーリズム):UN Tourism (国連世界観光機関)は「訪問客、観光産業、環境、受け入れ地域の需要に適合しつつ、現在と未来の環境、社会文化、経済への影響に十分に配慮した観光」と定義
※資料の一部を抜粋
こちらでは、有識者ヒアリングで挙げられた日本のSTの「強み」と「課題」を、講演内容から抜粋して紹介します。
■日本の強み
- "自然"と"文化"が圧倒的に融合しており、切り離せない点
- 日本の文化は日本でしか見られないこと(オーセンティシティー)
- 自然と文化があるが故に生まれる、オリジナルの"食"
- 地方の多様性、自然や地元の人々との触れ合い
■日本の課題
- 観光コンテンツや持続可能性に関するストーリーを豊富に有するものの、適切な伝え方ができていない
- 国内の消費者のサステナビリティに関する認識が欧米諸国よりも低い
- 地域によっては"便利すぎる"ことも課題と考えられる
- 環境配慮への取り組みに一定の課題(プラスチック利用、個包装など)
日本には日本ならではのSTに適したコンテンツが多くありますが、STを実践することが旅行者の目的ではありません。魅力的な旅先やアクティビティがあるから旅をし、そこにサステナブルな選択肢があることが重要です。そのため、「観光魅力の磨き上げ」に加えて「持続可能性を高める取り組み」が必要です。
JNTOでは、2021年6月、「SDGsへの貢献と持続可能な観光(サステナブル・ツーリズム)の推進に係る取組方針」を策定し、2022年1月には部署横断の「サステナブル・ツーリズム推進本部」を設置しました。2023年6月には、新たな訪日マーケティング戦略を策定しています。
今後も、様々な取り組みを通して、引き続きサステナブル・ツーリズムの推進を図っていく予定です。
地域関係者をつなぐ機会としてネットワーキングを実施
第二部では、自治体やDMOの希望者を対象に、JNTO職員がアドバイスを行うコンサルティングと、地域のインバウンド関係者間のネットワーキングの機会を設けました。ネットワーキングは、昨年度のインバウンド研修会のアンケートで寄せられた地域の皆様の希望を反映して、新たな取り組みとして実施しました。
参加者の皆様からも、講演、コンサルティング・ネットワーキングについてコメントをいただきましたので、一部をご紹介します。
■参加者のコメント
- 様々な同業界の方々と意見交換ができたり、JNTO海外事務所や地域担当の方などとリアルにお会いし、つながりを持てることができ大変貴重な機会だった。
- 市場動向が把握でき、訪日外客のご案内時の参考になった。イタリアもイギリスも共通して交通アクセス面が1番の課題ではないかと感じた。また、地域の歴史やストーリーに関心を持っていただけることが重要だと再認識できた。
- サステナブルツーリズムの講演について、これからの時代に沿った内容であり、意識していかなければならないと感じた。
地域プロモーション連携室では、今後も地域の皆様と連携しながらプロモーションを実施していきたいと考えておりますので、引き続きお力添えくださいますようお願い申し上げます。
ご不明点・ご相談などがございましたら、下記問い合わせ先にご連絡ください。
■問い合わせ先
JNTOサステナブル・ツーリズム担当 sustainable@jnto.go.jp
地域プロモーション連携室 action@jnto.go.jp
■参考リンク
デジタルパンフレット:https://partners-pamph.jnto.go.jp/simg/pamph/1683.pdf