2024年7月17日
欧米豪・中東市場の高付加価値旅行を取り扱う旅行会社を招請~「Japan Luxury Showcase」を実施~
日本政府観光局(JNTO)は、2024年2月4日(日)~2月9日(金)、消費額の拡大と地方誘客促進のため、欧米豪・中東地域の高付加価値旅行を取り扱う旅行会社を招請し、Japan Luxury Showcase(JLS)を開催しました。今回は、ファムトリップ8コースのうち2コースを取り上げ、海外の旅行会社から高い評価を得たコンテンツやガイディングのポイントを中心にレポートします。
*Japan Luxury Showcase(JLS):高付加価値旅行に特化したファムトリップ(招請旅行)と商談会により構成
テーマを設定した8コースのファムトリップ
JLSのファムトリップでは、観光庁が選定した高付加価値旅行のモデル観光地*を参考に8コースを設定し、3泊4日の日程で実施しました。 ファムトリップの目的は、高付加価値旅行を取り扱っている旅行会社に、なぜそのデスティネーションを顧客に紹介するのかを自身の体験を通じて理解してもらい、その後の手配や販売につなげてもらうことです。参加者が各地域の理解を深めてそれぞれの魅力を感じてもらえるように、旅程の設計には地域特有の自然環境やその地に根付いた文化・歴史などに基づく「旅の軸」ともいえるテーマを設定することが重要です。
JLSのファムトリップでは、コースごとに「奈良・和歌山コース:世界遺産の巡礼道を通じ日本文化を感じる旅」「鹿児島・屋久島コース:人々の暮らし・文化と豊かな生態系を巡る旅」「せとうちコース:自然の豊かさとアートの世界を探求する旅」などのテーマを設定しています。テーマに沿った視察コンテンツを旅程に組み込み、各地域の魅力を紹介しました。
*高付加価値旅行者の誘客に向けて集中的な支援等を行うモデル観光地11地域
*高付加価値なインバウンド観光地づくり モデル観光地11地域 マスタープラン
2023年度JLSファムトリップの8コース
ファムトリップ事例1:金沢・福井コース「禅・哲学・匠の本質を知る旅」
このコースでは、金沢にある加賀友禅の工房や越前和紙、打刃物の工房などを見学し、参加者は職人の技術の神髄に間近で触れることができ、感動している様子が印象的でした。引き継がれてきた文化や技術について職人から直接説明してもらう体験が、「高付加価値旅行層の知的好奇心を満たすことにつながる」と、参加者の高い満足度につながったようです。
また、永平寺では、永平寺での修行経験を持つガイドから、事前に禅の歴史や考え方、食事の大切さについて解説してもらった上で、実際に座禅体験や精進料理を召し上がっていただいたことで、参加者からは「特別でユニークな体験だった」「この旅行のハイライトだった」といった声が聞かれました。
ファムトリップ実施後のアンケートでは、「素晴らしい体験で顧客にぜひ勧めたい」「オーセンティック(本物)な体験に興味があり、にぎやかすぎる場所や観光地を避けたいリピーター向けに紹介したい」「自分の顧客にピッタリである」といったフィードバックがありました。
加えてこのコースは、現役の住職という経歴を持ち、地域の工房とも親交がある現地ガイドが同行し、宗教や僧侶としての生活についての詳しい説明や職人と息の合ったガイディングがあったことも、参加者から評価が高く、ファムトリップ全体の満足度の高さにつながったと考えられます。
改めて、高付加価値旅行においては表面的・一方的な解説ではなく、旅行者の興味関心に応じ、観光地やアクティビティの背後にあるストーリーをわかりやすく伝えるガイドの重要性を実感しました。
金沢 兼六園での様子
ファムトリップ事例2:沖縄コース「継承される本質的な琉球文化を体験する旅」
ビーチリゾートのイメージが強い沖縄ですが、新たな沖縄の魅力を紹介するべく、沖縄空手体験や琉球舞踊鑑賞、長寿にもつながる豊かな自然に根差した食を切り口に、何世代にも亘って承継されてきた沖縄の生活文化にスポットを当てました。
沖縄空手体験では、オリンピック金メダリストである師範が直々に沖縄伝統空手の歴史や流派の説明を行い、圧巻の演舞も披露していただいた後、参加者も初めてとなる空手体験を楽しみました。参加者は、至近距離で世界最高峰の演舞を鑑賞できたことに心打たれていた他、師範やインストラクターの人柄もあり、親しく交流しながら体験できたことで、「自分の顧客、特にファミリー層が好きになると確信した」「素晴らしい文化に浸ることができるユニークな経験」と、参加者全員が非常に満足した様子でした。
また、長寿の村で知られる北中城村で無農薬・肥料不使用の自然栽培に取り組む地元の方々と触れ合いながらの農業体験では、沖縄の「食」や「健康」「生きがい」についての話が「地元の人との交流を通した学び」につながり、高付加価値旅行者に提案できる要素であると好評を得ました。さらに、障がい者に農場での就労機会を提供するという農業と福祉の農福連携の取り組みが、「地域への還元」という観点からも高付加価値旅行者にお勧めできるという評価でした。
ファムトリップ実施後のアンケートでは、「沖縄を商品に加えるべき理由が明確になった」「喜びと誇りを持って(顧客に)語ることができる」「顧客を沖縄に送ることに一瞬たりともためらいはない」など、心から沖縄の魅力を感じ、顧客に紹介していきたいという熱い思いが伝わってきました。
沖縄空手体験の様子
JLSファムトリップでの気付き
招請後に行ったアンケートで、ファムトリップ全体の評価は、4段階のうち最上位評価にあたる「満足」が78%、「どちらかといえば満足」が22%と非常に高い評価であったことから、日本の各地方における高付加価値旅行のポテンシャルを裏付ける結果となりました。
どのコースにもその道のプロフェッショナル(伝統工芸の職人、寺院の僧侶、武道家、美術館のキュレーターなど)からの解説や地元の人との接点・交流が盛り込まれており、その土地ならではのストーリーを体感できるアクティビティが高評価となりました。
一方で、ファムトリップの改善点としては、「(顧客からのリクエストがあるため)高級料理だけでなく、カジュアルな食事も行程に組み込んでほしい」「視察場所が少し多すぎた」「高付加価値旅行の特別感のある演出がなくとも、訪問地の代表的な観光スポットは視察しておきたい」「移動が長すぎる部分もあった」といった意見もありました。視察行程を検討する際には、コンテンツ(視察・アクティビティ)や食事に緩急をつけることや、個々のコンテンツの魅力度という「点の視点」だけでなく、適切な移動距離も考慮した「線(ルート)としての視点」をさらに意識する必要があるという気付きもありました。
JNTOでは、引き続き、旅行消費額の拡大とモデル観光地をはじめとする地方誘客促進に向けて、商談会や招請事業などを通じ、海外の旅行会社に日本各地の魅力を発信していくほか、海外の旅行会社からのマーケットインの目線でのフィードバックを地域の皆様に還元することで、高付加価値旅行者の受け入れ体制の整備にも貢献していきます。
【連絡先】
高付加価値旅行推進室
【参考リンク】
■JNTO高付加価値旅行特設ページ
https://www.japan.travel/en/luxury/