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万博を契機とした訪日外国人旅行者の地方誘客に向けて公式観光ポータルサイトを開設~万博のテーマと関連した日本各地の体験などを提案~

万博を契機とした訪日外国人旅行者の地方誘客に向けて公式観光ポータルサイトを開設~万博のテーマと関連した日本各地の体験などを提案~

万博を契機とした訪日外国人旅行者の地方誘客に向けて公式観光ポータルサイトを開設~万博のテーマと関連した日本各地の体験などを提案~

大阪・関西万博が、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、2025年4月13日から10月13日まで大阪市の人工島、夢洲(ゆめしま)で開催されます。 主催者の公益社団法人2025日本国際博覧会協会(以下、万博協会)は、万博に来場した訪日外国人旅行者の地方誘客を図る取り組みのひとつとして、2024年4月、全国各地の体験商品を掲載・販売する公式観光ポータルサイト「Expo 2025 Official Experiential Travel Guides」を開設しました。 本ポータルサイトを担当している万博協会広報・プロモーション局地域・観光部観光推進課課長の畑田健さんと、万博を更なる訪日外国人旅行者誘致に繋げようと同サイトを活用している有限会社兵吉屋(海女小屋はちまんかまど)代表取締役社長の野村一弘さんに、掲載している体験商品の概要やインバウンド誘客に向けての取り組みを伺いました。

万博のテーマと親和性がある体験商品で、地方誘客を図る

―はじめに、万博協会の役割と取り組みについて教えてください。

畑田さん(以下、敬称略):万博協会の観光推進課では、万博効果を全国に波及させるためさまざまな取り組みを行っています。

2023年1月には、観光関係団体や交通事業者、日本政府観光局(JNTO)など33団体・事業者で構成する「万博を契機とした観光推進ネットワーク会議」を設立しました。現在は、各団体や事業者と連携しながら、国内外へのプロモーションを進めています。

 公式観光ポータルサイト「Expo 2025 Official Experiential Travel Guides」も、こうした取り組みの一つです。このポータルサイトのコンセプトは、国内外の万博来場予定者に対して、万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」に関連した日本各地での過ごし方や体験を提案し、地域へ訪問していただくことです。ポータルサイトには、地域の魅力紹介、万博テーマの体験商品販売、地域イベント紹介の機能が搭載されています。  

―各地域で体験できる商品を掲載しているとのことですが、その概要について教えてください。

畑田:体験商品の掲載にあたっては、海外のお客様も検索しやすいよう、地域はもちろん、「日本の暮らしと食」、「伝統・文化・歴史」といったジャンルや、「いのち救う」、「いのちに力を与える」、「いのちをつなぐ」といった万博のサブテーマとの関連性などから検索していただけるように工夫しました。ポータルサイトの対応言語は日本語・英語・中国語(繁体字・簡体字)・韓国語の4カ国語で、各商品の提供事業者が翻訳して登録します。海外からのクレジットカード決済も可能です。

 ―商品掲載にあたっての基準は何でしょうか。掲載にあたって審査はありますか。

畑田:ポータルサイトには現在、さまざまな体験商品が掲載されています。掲載する体験商品の基準としては、万博のテーマと親和性がある商品、お客様に高い満足度を提供できる高付加価値商品、SDGS(持続可能な開発目標)への取り組みが行われている商品に該当することが挙げられます。このほか、外国人観光客等への受入体制が整っていることもポイントです。万博のテーマと親和性が高く、そこでしか体験できないような独自性と訪日客に対応できる受入体制を備えた商品を掲載できるよう、万博協会で、随時掲載商品の審査を行っています。

―具体的にどのような商品が掲載されているのでしょうか。

畑田:たとえば、広島県尾道市で提供される「瀬戸内美食倶楽部ガストロツアー」は、自分で旬の魚を釣り、地元の人と一緒に一番おいしく食べられるレシピで調理し味わいます。徳島県美馬市の「美馬和傘の製作体験プラン」では、2日間かけて職人と伝統工芸である和傘の仕上げ体験を行い、江戸時代から続くうだつの町並みを散策します。

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▲美馬和傘の製作体験プランの様子 ©公益社団法人2025年日本国際博覧会協会

また、特集ページでは、新潟県魚沼市で、地元のおばちゃんと郷土料理を作って味わう体験や、神奈川県の鎌倉市で、約800年にわたって伝わる「鎌倉彫」の匠を訪ねる体験など、全国各地の特色のある体験を動画を交えて紹介しています。

 ―掲載商品と万博のテーマとの親和性について教えてください。

畑田:万博のテーマとの親和性については、一例をあげると、三重県の伊勢志摩・鳥羽にある「はちまんかまどの海女小屋体験」は、全国的に海女が減少する中で、2000年以上の歴史があるという海女の文化を継承する商品で、万博のサブテーマである「いのちをつなぐ」に当てはまります。

 

「いのちつなぐ」を体現する海女文化の継承

―ここでは、ポータルサイトで紹介されている「はちまんかまどの海女小屋体験」を提供している有限会社兵吉屋(海女小屋はちまんかまど)の野村一弘さんにお話を伺います。海女文化を伝えるためにどのような取り組みをしていますか。

 野村さん(以下、敬称略):海女文化は2000年以上の歴史があると言われています。現在全国に約1200人いる海女の約半数が三重県の伊勢志摩地方で漁をしています。

「海女小屋はちまんかまど」は、素潜り漁の達人である海女や元海女たちが漁をして、冷えた体を温める「海女小屋」を模した店内で、訪れた人たちに海女文化を伝えています。漁や自分たちの暮らしについて話しながら、イセエビまたはアワビ、サザエといった新鮮な魚介を振る舞い、地元の踊り相差(おうさつ)音頭を一緒に踊る「セレブ気分コース」など、さまざまなプランがあります。

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▲海女さんと交流しながら、食事を楽しむ

万博のテーマとの親和性については、古くから続いている海女文化を伝えていることです。現在の海女は磯着ではなくウェットスーツで潜りますので長時間漁ができますが、獲りすぎないように、素潜り漁の時間は午前9時から10時半までの1時間半と、漁協と海女組合の間で決められています。獲る貝の大きさも基準があり、小さい貝は海に放します。こうした海との関わりを大切にしながら続いてきた職業だということを海女小屋体験で伝えていくことが大事だと思っています。

また、こうした体験の提供は、海女のモチベーションアップにもつながっています。これまで海女は自分たちが獲った魚介を漁協に納めるだけでしたが、小屋ではそれを焼いて出すと、お客さまが喜んで食べてくれます。そんな姿を見ると「また頑張って獲ってこないといかん」と思うようです。お客さまが自分たちのことについて関心を持って尋ねてくれることによって、海女としての誇りを持つようになりました。

―海女文化を訪日外国人旅行者に伝えるためにプロモーションやインバウンド受入体制で取り組んでいることを教えてください。

野村:「海女小屋はちまんかまど」は、2004年に北米からのツアー客受け入れをきっかけに開業しました。2023年には、約7000人の外国人のお客様にお越しいただいております。

来訪の多い国、地域は、コロナ禍前は、香港からの個人のお客様が最も多く、次いで台湾、マレーシア、タイ、フランス、アメリカ、シンガポールとなっていました。現在は、香港からのお客様は減りましたが、他の国のお客様は85%程度戻ってきています。また、マレーシアからのお客様はコロナ禍前より大幅に増えました。

プロモーションでは、万博に向けて欧米のお客様や魚介類を好む人が多い東南アジア、シンガポール市場の誘客に力を入れています。コロナ禍を経て利用が落ち込んでしまったので、今回の万博ではぜひたくさんのお客さまに来ていただきたいです。素潜りをする海女のエネルギッシュな魅力を発信していきたいと思います。

 受入体制については、2012年にクレジットカード決済を導入しフリーWi-Fiを設置しています。2014年には、ムスリム(イスラム教徒)に対応するため、男女別の礼拝室と足洗い場を整備するとともにハラルやベジタリアン、ヴィーガンなど宗教的な制約や志向、アレルギーに対応した食事を提供し始めました。また、外国のお客様に海女文化のストーリーを伝えることが重要ですので、通訳を雇用し魅力を伝えています。現在は伊勢市に住むオランダ人スタッフが英語、ドイツ語、オランダ語の通訳をしています。

 このほか、JR・近鉄の鳥羽駅から海女小屋までは、車いす電動昇降機付きの福祉車両「海女バス」で送迎しています。洋式シャワートイレや車いすトイレを整備し、車いすの貸し出しなども行っています。

 

万博を契機に開発した体験商品をレガシーに

―万博協会の畑田さんにお話を伺います。ポータルサイトに商品を掲載するメリットについて教えてください。

畑田:ポータルサイトに商品を掲載するメリットは、万博来場者にダイレクトに情報をお届けできることです。たとえば、万博の入場チケット購入者に対して、メールマガジンや来場日時の予約完了時などにポータルサイトの情報を発信します。また、万博期間中は、会場内のサイネージなども活用してPRしていきます。商品の登録・掲載にかかる費用は無料で、販売実績に応じた手数料が発生します。販売金額の10%(税込)

―万博ポータルサイトの今後の展望についてお聞かせください。

畑田:2024年4月に開設したばかりということもあり、課題もあります。全国各地への誘客を図るため、首都圏や東北地方など大阪と距離のある地域の商品のラインアップも強化していく必要がありますし、ポータルサイト自体も広く周知していきたいと考えています。

また、アメリカなど一部の国や地域からの流入はありますが、現時点での閲覧数はまだ日本国内からが多い状況です。引き続き海外プロモーションに力を入れるとともに、ポータルサイトのSEO対策も進めていきます。

 ―最後に、万博に向けた意気込みや期待、ポータルサイトへの商品掲載を検討している方へのメッセージをお願いします。

畑田:開幕半年前の20241013日からは、来場日時の予約も始まります。それ以降、日本での具体的な訪問計画を立てられる方も多いと想定していますので、まずは秋に向けてしっかりと各地域の商品のラインアップをそろえられるよう、ぜひ魅力ある商品のご申請をお待ちしております。

ポータルサイトの公開は万博が終了する202510月までですが、各地域で一体となって万博に向けて作り上げた商品は、万博後も残っていくと思います。それらが、引き続き地域で活用され、万博のレガシーとなることを期待しています。

 

■観光ポータルサイト、商品登録申請手続き等についてのお問い合わせ

《Expo 2025 Official Experiential Travel Guidesページ》

https://www.expo2025travel.jp//

《お問合せ》

公益社団法人2025年日本国際博覧会協会
広報・プロモーション局地域・観光部観光推進課
メールアドレス:travel-guides@expo2025.or.jp

■参考サイト:

《大阪・関西万博特設Webページ》

・英語:https://www.japan.travel/en/expo2025

・中国簡体字:https://www.japan-travel.cn/expo2025

・台湾繁体字:https://www.japan.travel/tw/expo2025

・韓国語: https://www.japan.travel/ko/expo2025